第4話

文字数 724文字

 中学校に入り、吹奏楽部に入部。打楽器担当だ。打楽器、高い音、でかい音、リズムを引っ張る音。とにかく目立つ。シンバル、ティンパニ、サンバホイッスル、トライアングル、アゴゴベル、シロフォン、タムタム、何十種類の楽器を担当したかわからない。
 もう一度言うが、目立つ。
 結果、私には女の子のファンが増えまくった。練習していると、隣の校舎から黄色い声援が飛ぶ。練習中に花束を持ってくる。握手を求めて人が来る。
 先生から、「家庭科室で練習しなさい」との指示。薄暗い家庭科室にスティックとメトロノームを持って入り、練習を重ねた日々もあった。
 憧れの女の子がいた。彼女はピアノが上手く、成績も優秀、色白で美人だった。彼女と仲良くなりたくて、同じ音楽を頑張った日々があった。
 ある日、日本フィルハーモニーのペアチケットを、テレビ局からプレゼントされた。
 「チャンス」
私の頭に浮かんだ、「彼女を誘う!!!」
 親にタクシーチケットをもらい、一緒にオーケストラ鑑賞をした。帰りには、彼女に花束を渡した。
中学1年生の時の話だ。当時の私に、一言伝える、「ませがき」。
 吹奏楽部の練習は厳しく、朝練、昼練、放課後は七時までみっちりと練習を強いられた。年間で、ほんの数日の休みしかないスパルタぶりだった。カレンダーをみてはいつも、「あ~卒業まであと何年何か月」と数えたのを記憶している。それでもなぜ辞めなかったのか?
 キャーキャー言われるのが、心地よかった、それだけだ。
 学校には、私のファンクラブができ、知らない先生からは「吹奏楽部の君」と呼ばれた。
「吹奏楽部所属」=もてる、の公式が、私の中で出来上がっていた。
 薄暗い家庭科室、勉強机を一人、ステイックで叩く日々が続いた。
 
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