第32話

文字数 1,454文字

あたしたちは教室を出て、並んで帰った。

途中、ヒロは明るく話しかけてきた。テレビドラマのこと、流行りの歌のこと、教師の揶揄(やゆ)や、試験のこと……

さっきのことをあたしが許していれば、あたしは笑顔で話に応じるだろう。許していなければ、あたしの反応は薄くなる。

「どちらなのか知りたい」

ヒロは色々と話しかけて、あたしの反応を窺っているようだった。

あたしのショックは続いていた。別れたいとまでは思わなかったけれども、簡単には切り替えられないだろうに、という怒りの感情が、心の底にあった。

ただ一方で、ほっとする気持ちもあった。

「そんなに気になるなら、もうしないだろう」

こう思えたから。

しかし、そうはならなかった。

授業中、あたしはすっと立ちあがり、教師に近付き、耳打ちをする。そして、教室を出る。

「生理です」と言えば、特に男性教師は腫物を触るかのごとく、目も合わせずに、うんうんと頷きトイレを許可してくれた。

トイレに向かうのは本当だけど、生理は嘘だった。

トイレの前にはヒロがいた。あたしが教室を出る前に、ヒロも教室を出ていた。ヒロは腹痛を訴えるらしい。これも嘘だ。

そのころ、こういう嘘を何度か吐いていた。

「こういうの、よくないと思う」

あたしは言った。

「いいから」

ヒロはあたしの腕をつかんで、男子トイレのなかに引き入れた。

「三分な」

ヒロはそう言うと、あたしを抱きしめ、大きくなったペニスをごりごりとあたしの腹部に押し当てながら、スカートのうえからお尻を揉むように撫で回した。

それから、急にあたしの顔を見つめ、下手なキスをする。十数秒くらいで、今度は胸を揉みはじめる。

当初、確かに三分くらいで終わっていた。

しかし、回数を重ねるごとに、ヒロは徐々に大胆になっていった。

あたしのブラウスを開けるようになった。

それから、ブラジャーをずらすようになった。乳首を(もてあそ)んだ。そして吸った。

パンティのなかに手を入れるようにもなった。パンティをずらしもした。

あたしが拒否しても、ヒロは聞き入れてくれなかった。

「いいから、じっとして」

やがて、ヒロはペニスを取り出すようになった。皮の口から亀頭が顔を出している、大きくないペニスだった。

「ちょっとさすって」

初めてペニスを出したとき、ヒロはあたしの手を誘導し、それを握らせた。

あたしは(うつむ)いて、言われた通り、ペニスを触った。熱く、棒のようにカチカチだった。

「もっと、こうやって」

ヒロはあたしの手を取り、上下に大きく動かすように要求した。

「……いやだ」

あたしは手をとめ、小声で言った。

「頼むから」

ヒロは懇願した。その声から必死さが伝わってきた。

あたしはぎこちなく手を動かしはじめた。

続けていると、ヒロは突然あたしの手ごとペニスを握り、ものすごい速さで上下させた。ヒロは鬼気迫る表情をしていた。何か一点に(はなは)だしく集中しているのが分かった。

やがてヒロは、大きな貧乏ゆすりをするように片膝を震わせた。同時に、ペニスが痙攣した。一度目の痙攣で、精液は一メートルを超えて飛んだ。痙攣に従って、飛ぶ精液は勢いをなくし、最後には棒を伝った。それはあたしの手にも付いた。

ヒロは個室に入り、トイレットペーパーで後処理をした。あたしは手に付いたものをどうすることもできず、ただヒロの背中を見ていた。

ヒロは出てくると、あたしを見て、「おい、手を洗えよ」と、言った。

「先に戻ってるから」

あたしが手を洗っていると、ヒロはこう言って、トイレを出た。

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