第7話

文字数 550文字

「あたしが?」

「そう、あたしが」

「そんなこと言われても……」

ユウヤと彼女とが()める原因の一端はあたしにもある、と言うべきなのだろう。あたしの助力でその解決が容易になるなら、あたしは手伝うべきなのかもしれない。しかし、彼女はあたしの言葉を信じるのだろうか。ユウヤの前では常に冷静であっても、あたしの前ではどうだろう。「どろぼう猫め」という目で見られるのはいやだ。

「助けて欲しい。たいしたことしなくてもいいよ。一言(ひとこと)言ってくれれば済む話だから。別に暴力振るわれたりしないし」

一言だけで済む場合でも、その奥に無言の圧力があるだろう。勝ち誇ったように「中学生に嫉妬なんてするわけないでしょ。私とじゃ勝負になってないし」という目で見られかねない。

いずれにしても、重たい。あたしの心のなかで、行きたくないという思いが先行した。

「お願い、助けると思って。お願い、お願い、お願い」

ユウヤは両手を合わせて、深く頭を下げた。ここまでされたうえに、あたしにも少しは責任があるとなれば、断りにくかった。

「どこに行けばいいのですか」

「やった、助かったよ。部屋に来てくれれば」

「部屋はどこに……」

「すぐ近く。帰りは送るし」

「いえ、送るのは別に」

「ま、それは考えるとして、じゃ、行こう」

あたしたちはユウヤの部屋に向かって歩き始めた。
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