第88話

文字数 1,004文字

男は強引にシャツを(まく)りあげ、ブラジャーもずらした。あたしはシャツの(すそ)を引っ張って隠そうとした。

「ここでは何だってできるんだよ」

あたしは半周ほど振り回され、踵を引っかけられた。バランスを崩したあたしは布団のうえに尻餅をついた。うっと自然に声が漏れる。

「脱げ」

男は命令した。あたしは何もしなかった。

「早くしろ。女だからって優しくしてもらえるなんて思うな。法律がなきゃ、世間の目がなきゃ、力がすべてなんだよ」

男は半ば興奮状態だった。

素直に脱げるはずがなかった。羞恥心があった。反抗心もあった。それに男の興奮状態が不気味であり、困惑もした。

あたしが男をただ眺めていると、男はすっと近付いてきて、あたしの頬を張った。あたしは両手を突いて上体を支えた。一瞬で別の世界に連れていかれたかのような衝撃が走った。

男はあたしが振り返るまもなく飛び付いてきた。あたしは抵抗らしい抵抗はできなかった。男に組み敷かれ、乳房を隅から隅まで舐め回された。

「ガキめ……。ガキが……。ガキのだよ……」

男は舐めながら怒ったように呟き、薄気味悪く笑った。そして、突然乳首を強く噛んだ。

「痛いっ」

あたしは男を見た。

男は既にこちらを見ていた。あたしを目が合うと、薄い唇の片端を吊りあげて、

()けよ」と言った。男の口調には「言うことを聴く以外に選択肢はないだろ? お前を支配しているのは俺だよ」という勝ち誇ったような落ち着きがあった。

あたしの目から自然に涙がこぼれた。

「その泣くじゃないだろ」

男は舌打ちをし、再びあたしの胸に顔を沈めた。

また乳首を噛まれるのではないかと身構えていると、男の手がパンティのなかに入ってきた。身動きがとれなかったので、男の思うままに弄ばれた。

あたしは性的に反応しなかった。男はそれが気に入らないのか、パンティから手を出すと、その指を自らの口に突っ込み、唾液を絡め、またあたしの股間へと運んだ。そうして、陰核のうえを何度も往復させた。

「いやっ」

あたしは男を押し返そうとした。しかし、あたしの力は足りなかった。男は人一倍重くもあった。

男はもがくあたしを見るのが楽しいのか、吠えた。

「ほら、ほら、啼け、啼いてみろよ」

あたしが(あらが)えば、男は喜ぶ。だから、あたしは感情を殺した。目を(つむ)り、顔をそむけ、全身の力を抜いた。

男はむきになった。陰核を激しく擦った。膣のなかに指を入れた。乳房を唇でつねった。

それでも、あたしは無反応を押し通した。

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