第45話

文字数 667文字

あたしの体は乱暴に揺らされ、下着が太ももの位置までずらされた。

お尻や陰部が(さら)される。

あたしはスカートの(すそ)をつかんで必死に隠そうとした。

松島は、チッと舌打ちをし、

「おとなしくしとけ」と、不機嫌な声を出し、スカートを投げるように払った。

そうして、自分のパンツの前だけをおろした。

指のようなペニスがうえを向いていた。

松島はそれをあたしの性器に当てた。

「いやっ、いやだ」

あたしは暴れた。

「おとなしくしとけって。いつも島田とやってることだろ。清純ぶるなっ」

小さな声だったけれど、脅すような口調で、松島は言った。

もう駄目だと思った。

そのとき、美術室の戸が開いた。複数の声もした。

松島は飛び退()いた。慌てて服装を整えている。

松島の前髪は眉のうえまであるけど、それは頭頂部付近から持ってきたもので、額はかなりうえにまで広がっている。

その白くて丸い額のうえに、乱れた髪が(すだれ)となって張り付いていた。

美術室で足音が広がった。

松島は、美術室と準備室とを隔てる扉が開いてもすぐには誰の視界に入らない場所に移動し、そこで改めて身なりを整えていた。

あたしは下着を戻し、速足で準備室から直接廊下に出た。


警察に行くことを、一度は考えた。けれども、あたしが事の顛末(てんまつ)を説明して、それを信じてもらえると思えなかった。

逆に、松島の言いぶんは通ると思えた。

相沢は成績が悪いから、その腹いせで教師にいやがらせをしているだけ――などという言いぶんが。

しかし、何よりも、ヒロとのできごとは本当のこと。あたしは引け目を感じざるを得なかった。

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