第1章 - 4 真実
文字数 1,329文字
4 真実
「ふざけるな! バカ野郎!!」
涙がポロポロ溢れ出て、何度もおんなじ言葉を叫び続けた。
きっとあいつは今頃、スキップでもしながらどこかの夜道を歩いている……そんな想像が次から次へと現れて、彼の言葉はさらに毒気を帯びていくのだ。
「山代てめえ! この野郎!」
「地獄に、堕ちやがれ!」
「今度会ったら、絶対、殺してやるぞ!」
――殺してやるぞ!
確かに、翔太はそんな言葉叫びまくった。
借金を押し付けただけじゃなく、なけなしの金まで持ち去ったのだから、多少うるさかったくらいでガタガタ言うな……と、いきなりの来訪者に向けて、彼はそんな印象を持っていた。
返す筈の金がなくなった。
だから最短で金を工面しようと、彼はひと月住み込みで、地方の工事現場に出稼ぎに行った。
ひと月で、ふた月分を稼ぐのだから、そこそこハードには違いない。
それでもこうする以外道がないから、彼は「DEZOLVE」のオーナーに頼み込んで休みを貰い、着の身着のまま信州の山へと出掛けていった。
そうしてひと月後、彼がアパートに戻ってみると、すぐに刑事が訪ねてくるのだ。
「山代勇さんをご存知ですよね?」
いきなりそんなことを聞いてきて、
「ひと月ほど前に、ずいぶんと大声を出されていたようですが……」
――山代さんと、何かあったんですか?
この後は、何を言っても信じているのか……いないのか? とにかく刑事は薄笑いを浮かべたままで、最後に驚く言葉を口にした。
「それで、つい殺してしまったと、いうことですかね?」
開いた口が塞がらないまま、翔太は刑事に連れられ、いやいやアパートを後にする。
それからずっとアパートへは戻れないまま、結局五年以上が経ってしまった。
もしもあれがなけりゃ、借金だってもっと早く返せたろうし……。
――何から何まで、あの野郎のせいだ!
殴り殺したいくらいに憎い相手は、すでにこの世にいなかった。
もちろんあの日、翔太は絶対、殺してなどいない。
なのに山代の背中にはナイフが刺さり、彼の部屋からすぐのところ、なんとアパートの裏庭で発見された。死後三日が経っており、たまたま迷い込んだボールを取りに入った少年が発見し、大騒ぎとなっていたらしい。
刺さっていたナイフは折り畳み式の登山用で、翔太が普段使っているもの。
だから指紋だってなんだって付いている。
「借金を押し付けられて、なけなしの金まで盗まれちゃ、そりゃあ頭にも来るよなあ、そりゃあよ、殺したくもなるってもんだ、分かるよ、分かる!」
取調べの刑事はそう言って、翔太の肩を叩いてからは打って変わって凄むのだ。
「だからよ、吐いちまえって! 窓から出ようがどうしようがだ! 自然に背中にナイフが刺さるなんてことが、この世にあるわけないんだからよ!」
それからも、何を訴えたって信用されず、天野翔太は殺人犯として起訴される。
結果、懲役十年という刑が確定。それでも彼は腐ることなく刑期を務め、模範囚として五年とちょっとで出所することができたのだった。
そうして借金を返し終え、あっという間に癌に冒され、他界してしまうのだ。
最後の最後で愛する伴侶と巡り会うが、そんな出会いのお陰で、なんとも驚きの真実を知ってしまった。
「ふざけるな! バカ野郎!!」
涙がポロポロ溢れ出て、何度もおんなじ言葉を叫び続けた。
きっとあいつは今頃、スキップでもしながらどこかの夜道を歩いている……そんな想像が次から次へと現れて、彼の言葉はさらに毒気を帯びていくのだ。
「山代てめえ! この野郎!」
「地獄に、堕ちやがれ!」
「今度会ったら、絶対、殺してやるぞ!」
――殺してやるぞ!
確かに、翔太はそんな言葉叫びまくった。
借金を押し付けただけじゃなく、なけなしの金まで持ち去ったのだから、多少うるさかったくらいでガタガタ言うな……と、いきなりの来訪者に向けて、彼はそんな印象を持っていた。
返す筈の金がなくなった。
だから最短で金を工面しようと、彼はひと月住み込みで、地方の工事現場に出稼ぎに行った。
ひと月で、ふた月分を稼ぐのだから、そこそこハードには違いない。
それでもこうする以外道がないから、彼は「DEZOLVE」のオーナーに頼み込んで休みを貰い、着の身着のまま信州の山へと出掛けていった。
そうしてひと月後、彼がアパートに戻ってみると、すぐに刑事が訪ねてくるのだ。
「山代勇さんをご存知ですよね?」
いきなりそんなことを聞いてきて、
「ひと月ほど前に、ずいぶんと大声を出されていたようですが……」
――山代さんと、何かあったんですか?
この後は、何を言っても信じているのか……いないのか? とにかく刑事は薄笑いを浮かべたままで、最後に驚く言葉を口にした。
「それで、つい殺してしまったと、いうことですかね?」
開いた口が塞がらないまま、翔太は刑事に連れられ、いやいやアパートを後にする。
それからずっとアパートへは戻れないまま、結局五年以上が経ってしまった。
もしもあれがなけりゃ、借金だってもっと早く返せたろうし……。
――何から何まで、あの野郎のせいだ!
殴り殺したいくらいに憎い相手は、すでにこの世にいなかった。
もちろんあの日、翔太は絶対、殺してなどいない。
なのに山代の背中にはナイフが刺さり、彼の部屋からすぐのところ、なんとアパートの裏庭で発見された。死後三日が経っており、たまたま迷い込んだボールを取りに入った少年が発見し、大騒ぎとなっていたらしい。
刺さっていたナイフは折り畳み式の登山用で、翔太が普段使っているもの。
だから指紋だってなんだって付いている。
「借金を押し付けられて、なけなしの金まで盗まれちゃ、そりゃあ頭にも来るよなあ、そりゃあよ、殺したくもなるってもんだ、分かるよ、分かる!」
取調べの刑事はそう言って、翔太の肩を叩いてからは打って変わって凄むのだ。
「だからよ、吐いちまえって! 窓から出ようがどうしようがだ! 自然に背中にナイフが刺さるなんてことが、この世にあるわけないんだからよ!」
それからも、何を訴えたって信用されず、天野翔太は殺人犯として起訴される。
結果、懲役十年という刑が確定。それでも彼は腐ることなく刑期を務め、模範囚として五年とちょっとで出所することができたのだった。
そうして借金を返し終え、あっという間に癌に冒され、他界してしまうのだ。
最後の最後で愛する伴侶と巡り会うが、そんな出会いのお陰で、なんとも驚きの真実を知ってしまった。