第5章 - 5 危機一髪(4)〜 6 急転直下
文字数 1,346文字
5 危機一髪(4)〜 6 急転直下
「お前さんのお友達の方は、さっき言ってくれたんだけどな、二度と変な気は起こしませんってよ。でも、残念ながら、お前さんの方がそうじゃないってんなら、こりゃあもう、仕方がねえってことだあな〜」
――おい、ドラム缶をふたつ、ここに持って来い!
続いてそんな言葉を誰かに告げて、林田の靴は翔太の額からやっと離れた。
――本気なのか? 本当に、そんなことするのか?
きっと千尋が警察に届けたとしても、さっさと捜索なんて始まらない。
「様子を見ましょう」なんて最悪のリアクションもあるだろうし、そうなったらもう助かる道はひとつだけってことになる。
――わかった! もう二度と、あんたらには近付かないって、約束するから!
心で一回そう唱え、翔太はいよいよ声にしようと大きく息を吸ったのだ。
ちょうどその時、闇夜が一気に驚くような変化を見せた。
辺りが眩しいくらいに明るくなって、翔太は必死に顔を前後左右に動かしてみる。
しかし何が起きたか分からない。
――くそっ! なんだよいったい!
襲い来る恐怖に、彼は声を限りに叫ぶのだった。
「わかった! わかったから! ちょっと待ってくれって!!」
6 急転直下
そこだけが、まるで昼間のように明るくなった。
もちろんそうなった理由も知っていたから、ドキドキしながらその成り行きを見守ったのだ。
「あれって、警察じゃないか?」
高城店長がそう言って指さした先、ヘッドライトが当たったところにパトカーらしき車も見えた。人の姿もチラホラあって、高城はゆっくり車を停めて、静かな声で千尋に言った。
「これって、さっきの車に関係あるんじゃないか?」
すでに追っていた車は道路から外れ、海沿いにある建物の敷地内に入り込んでいる。
そうなれば当然、千尋らの車は追ってはいけない。だからそのまま通り過ぎ、どこかに車を停めようとなった。
ところがすぐのところに警察だ。道が左にカーブしていて、そこそこ広い空き地のような空間がある。その空間に何台ものパトカーが停車して、ちょうどヘッドライトがしっかり当たって運よく見えた。
そこからは、まるでテレビを見ているようだった。
二人はパトカーよりさらに奥の方に車を停めて、徒歩で様子を見ようと近付いたのだ。
ところがちょっとの間に、すでにパトカーは一台残らず消え失せている。
――え!? 見間違いだったの?
なんて声を上げようとしたその瞬間、一斉に唸りを上げるようなサイレン音が響き渡った。
二人が慌てて音のする方へ走り出すと、工場のような建物のある方が妙に明るく、何台ものパトカーが回転灯を光らせている。あれよあれよという間にサイレン音は消え去っていき、二人はただただ何が起きているのかと目を見開いた。
あっちこっちで強烈な照明灯が焚かれ、建物まわりをしっかり照らし出している。警察官らしい姿が動き回って、明らかにそこで何かが起きていた。
そうして今度は救急車のサイレンだ。二人の立っているところをさっさと抜けて、救急車は建物前でサイレン音を消し去った。
千尋はそこで、居ても立っても居られなくなる。
「店長! ここで待ってて!」
高城に大声でそう告げて、赤く点滅するライト目指して一気に走り出したのだった。
「お前さんのお友達の方は、さっき言ってくれたんだけどな、二度と変な気は起こしませんってよ。でも、残念ながら、お前さんの方がそうじゃないってんなら、こりゃあもう、仕方がねえってことだあな〜」
――おい、ドラム缶をふたつ、ここに持って来い!
続いてそんな言葉を誰かに告げて、林田の靴は翔太の額からやっと離れた。
――本気なのか? 本当に、そんなことするのか?
きっと千尋が警察に届けたとしても、さっさと捜索なんて始まらない。
「様子を見ましょう」なんて最悪のリアクションもあるだろうし、そうなったらもう助かる道はひとつだけってことになる。
――わかった! もう二度と、あんたらには近付かないって、約束するから!
心で一回そう唱え、翔太はいよいよ声にしようと大きく息を吸ったのだ。
ちょうどその時、闇夜が一気に驚くような変化を見せた。
辺りが眩しいくらいに明るくなって、翔太は必死に顔を前後左右に動かしてみる。
しかし何が起きたか分からない。
――くそっ! なんだよいったい!
襲い来る恐怖に、彼は声を限りに叫ぶのだった。
「わかった! わかったから! ちょっと待ってくれって!!」
6 急転直下
そこだけが、まるで昼間のように明るくなった。
もちろんそうなった理由も知っていたから、ドキドキしながらその成り行きを見守ったのだ。
「あれって、警察じゃないか?」
高城店長がそう言って指さした先、ヘッドライトが当たったところにパトカーらしき車も見えた。人の姿もチラホラあって、高城はゆっくり車を停めて、静かな声で千尋に言った。
「これって、さっきの車に関係あるんじゃないか?」
すでに追っていた車は道路から外れ、海沿いにある建物の敷地内に入り込んでいる。
そうなれば当然、千尋らの車は追ってはいけない。だからそのまま通り過ぎ、どこかに車を停めようとなった。
ところがすぐのところに警察だ。道が左にカーブしていて、そこそこ広い空き地のような空間がある。その空間に何台ものパトカーが停車して、ちょうどヘッドライトがしっかり当たって運よく見えた。
そこからは、まるでテレビを見ているようだった。
二人はパトカーよりさらに奥の方に車を停めて、徒歩で様子を見ようと近付いたのだ。
ところがちょっとの間に、すでにパトカーは一台残らず消え失せている。
――え!? 見間違いだったの?
なんて声を上げようとしたその瞬間、一斉に唸りを上げるようなサイレン音が響き渡った。
二人が慌てて音のする方へ走り出すと、工場のような建物のある方が妙に明るく、何台ものパトカーが回転灯を光らせている。あれよあれよという間にサイレン音は消え去っていき、二人はただただ何が起きているのかと目を見開いた。
あっちこっちで強烈な照明灯が焚かれ、建物まわりをしっかり照らし出している。警察官らしい姿が動き回って、明らかにそこで何かが起きていた。
そうして今度は救急車のサイレンだ。二人の立っているところをさっさと抜けて、救急車は建物前でサイレン音を消し去った。
千尋はそこで、居ても立っても居られなくなる。
「店長! ここで待ってて!」
高城に大声でそう告げて、赤く点滅するライト目指して一気に走り出したのだった。