第1章 - 4 真実(2)
文字数 1,057文字
4 真実(2)
「O型って凄いんですよ!」
そう言ってきたのは、かなり状態が厳しくなってきた頃だ。
痛みの方はモルヒネのお陰で楽にはなるが、体力の方はどうしようもない。
風呂に入るのもひと苦労で、翔太もいよいよ入院のことを覚悟し始めた頃だった。
突然、驚くよう事実を聞かされ、そんな馬鹿な! と、何度も何度も思ったが、
「あなた、これはね、本当のことなの……今はもう、一般の人だって知ってることよ。まあ昭和の時代に、どう思われていたかは、正直、知らないけど……」
そう言う妻の言葉はどう調べたって正しくて、つまりこれまでずっと、彼は騙され続けていたってことだ。
「だって、今は余程のことがないとしないでしょうけど、昔はね、他の血液型の人に輸血できたんですからね」
――どうして凄いのか?
そう尋ねると、即行そんな答えが返ってきた。
「他の血液型じゃできない、ってことか……」
「そうよ、あなたはA型でしょ? だから、あなたは輸血できないけど、いざとなったらね、わたしはあなたに輸血して、ちゃんと助けてあげられるわ」
だから血液型が違うってことは、〝カマキリ〟と〝バッタ〟くらいには、違う生き物って言えるんだと、真剣な顔で妻が翔太へ告げたのだった。
――血液型なんて、なんの影響も及ぼさない。
テレビ番組を観ていて、そんなコメントにいきなり反応したのが妻だった。
そして真相がどうであろうと構わなかったが、彼もそんな妻の反応にポツリと返した。
「そう言えば、俺の父親ってのも、確か、O型だったな……」
「そうなんだ、じゃあ、お母様がA型なのね?」
「いや、A型じゃないな……お袋は確か、B型だったよ」
「え? 嘘よ、それじゃあ、A型のあなたは生まれてこないわ」
そこで急に笑顔になって、
「A型ってのが、違ってるんじゃない?」
「いや、病院で胃癌の検査を何度もしたしね、こればっかりは、間違いじゃないよ」
「じゃあ、あれよ、ご両親のどちらかが違うのよ。昔はね、結構いい加減に覚えていたらしいもの、血液型……」
そこで間違いないって理由を話して聞かせ、
「いくらなんでも、母子手帳への記載は間違えないだろうし、父親の方もね、こっちも間違いようがないんだよ。亡くなった時にね、色々と、あったから……」
そして彼は、逆に妻へと尋ね返した。
「その、A型が生まれないってのは、絶対なの? なんパーセントとかは、そんなこともあるとかさ、あるんじゃない?」
そう言葉にすると、彼女は少し考えるように横を向き、視線を逸らしたままで呟くように声にした。
「O型って凄いんですよ!」
そう言ってきたのは、かなり状態が厳しくなってきた頃だ。
痛みの方はモルヒネのお陰で楽にはなるが、体力の方はどうしようもない。
風呂に入るのもひと苦労で、翔太もいよいよ入院のことを覚悟し始めた頃だった。
突然、驚くよう事実を聞かされ、そんな馬鹿な! と、何度も何度も思ったが、
「あなた、これはね、本当のことなの……今はもう、一般の人だって知ってることよ。まあ昭和の時代に、どう思われていたかは、正直、知らないけど……」
そう言う妻の言葉はどう調べたって正しくて、つまりこれまでずっと、彼は騙され続けていたってことだ。
「だって、今は余程のことがないとしないでしょうけど、昔はね、他の血液型の人に輸血できたんですからね」
――どうして凄いのか?
そう尋ねると、即行そんな答えが返ってきた。
「他の血液型じゃできない、ってことか……」
「そうよ、あなたはA型でしょ? だから、あなたは輸血できないけど、いざとなったらね、わたしはあなたに輸血して、ちゃんと助けてあげられるわ」
だから血液型が違うってことは、〝カマキリ〟と〝バッタ〟くらいには、違う生き物って言えるんだと、真剣な顔で妻が翔太へ告げたのだった。
――血液型なんて、なんの影響も及ぼさない。
テレビ番組を観ていて、そんなコメントにいきなり反応したのが妻だった。
そして真相がどうであろうと構わなかったが、彼もそんな妻の反応にポツリと返した。
「そう言えば、俺の父親ってのも、確か、O型だったな……」
「そうなんだ、じゃあ、お母様がA型なのね?」
「いや、A型じゃないな……お袋は確か、B型だったよ」
「え? 嘘よ、それじゃあ、A型のあなたは生まれてこないわ」
そこで急に笑顔になって、
「A型ってのが、違ってるんじゃない?」
「いや、病院で胃癌の検査を何度もしたしね、こればっかりは、間違いじゃないよ」
「じゃあ、あれよ、ご両親のどちらかが違うのよ。昔はね、結構いい加減に覚えていたらしいもの、血液型……」
そこで間違いないって理由を話して聞かせ、
「いくらなんでも、母子手帳への記載は間違えないだろうし、父親の方もね、こっちも間違いようがないんだよ。亡くなった時にね、色々と、あったから……」
そして彼は、逆に妻へと尋ね返した。
「その、A型が生まれないってのは、絶対なの? なんパーセントとかは、そんなこともあるとかさ、あるんじゃない?」
そう言葉にすると、彼女は少し考えるように横を向き、視線を逸らしたままで呟くように声にした。