第3章 - 3 説得(4)
文字数 1,299文字
3 説得(4)
天野さんの血液型は、A型のはずなんです。それから、お母さん、天野由美子さんの方はB型。と、いうことは、父親である男性は、A型かAB型でなければならないんです。じゃないと、A型の彼は生まれないですから……」
ここで少し間を置いて、千尋の反応を伺った。
さっきまでの「それがなんなのよ!」から、「それって、どういうことなの?」って顔付きになって、少なくとも拒絶する印象は消え去っている。
「つまり、O型やB型の男が父親だと名乗り出ても、そいつは本当の父親じゃないってことになるんですよ」
「あの……何を言いたいのかよく分からないけど、ただね、今は少なくとも、彼のお父さんは行方不明だっていうんだから、もうそんなの、関係ないじゃない?」
「でも、もしも、すでに彼の前に現れていたら? それでそいつが、いきなり天野さんの父親だって名乗り出て、そのせいで、大変な災難に巻き込まれてしまったら?」
「大変な災難って、なんですか?」
――借金を背負わされて、殺人罪で刑務所行きだよ。
「ところがそいつの血液型は、A型でもAB型でもない、O型なんだ。つまり、本当の父親なんかじゃありゃしない」
――わかるだろ? わかるよな?
「ちょっといいです? あの、言ってる意味はわかります。わかりますけど、どうして、そんなことをあなたが、知ってるんですか?」
――ああ、そうだよ、そりゃあ、そうだけどさ!
「まずは、彼に聞いてみてください。彼と、彼のお母さんの血液型のことを……それで、僕のいう通りだったら、さらに突っ込んだお話をさせていただきます」
そのかわり、自分のことは内緒にしてほしい。いずれ彼にもきちんと説明するから、今日のことはしばらく伝えずにいてくれないか……。
そう言い終わった時、千尋の顔には迷いがあった。
信じていいのか悪いのか……そんなこと以前に、やはり胡散臭いって顔付きが消え去っていない。
だから達哉は真剣な顔して、さらに声を強めて告げたのだった。
「これに、僕が得するようなことは何もありません。ただただ、天野翔太さんのことを思ってって、ホント、それだけっすから……」
するとすぐ、彼女はきっと何かを言おうとしたのだ。
スッと息を吸い込んで、そこでいっとき固まった。
だから何かを聞かれる前に、彼は慌てて声にする。
「僕のウチの電話番号です。もし、血液型がその通りだったら、必ずこちらに連絡ください。次に会う時には、何が起きてしまうかを、ちゃんとお知らせしますから……」
ポケットから電話番号の書かれた紙切れを取り出し、さっさと千尋の前に差し出した。
そして千尋はそれから、ひと言も声を発しない。
達哉が一方的にお詫びの言葉を声にして、部屋を後にしようと玄関に立っても、ジッと達哉の渡した紙切れだけを見つめていたのだ。
ただとにかく、後は彼女からの連絡を待つしかない。
最悪それがなかったら、天野翔太に直接当たって砕けるか……なのだ。
ところがだった。
彼女はトコトン〝せっかち〟なのか、はたまた行動力がすごいってことか? アパートを訪ねた日の夜遅く、いきなりまさみが達哉の部屋に現れるのだ。
天野さんの血液型は、A型のはずなんです。それから、お母さん、天野由美子さんの方はB型。と、いうことは、父親である男性は、A型かAB型でなければならないんです。じゃないと、A型の彼は生まれないですから……」
ここで少し間を置いて、千尋の反応を伺った。
さっきまでの「それがなんなのよ!」から、「それって、どういうことなの?」って顔付きになって、少なくとも拒絶する印象は消え去っている。
「つまり、O型やB型の男が父親だと名乗り出ても、そいつは本当の父親じゃないってことになるんですよ」
「あの……何を言いたいのかよく分からないけど、ただね、今は少なくとも、彼のお父さんは行方不明だっていうんだから、もうそんなの、関係ないじゃない?」
「でも、もしも、すでに彼の前に現れていたら? それでそいつが、いきなり天野さんの父親だって名乗り出て、そのせいで、大変な災難に巻き込まれてしまったら?」
「大変な災難って、なんですか?」
――借金を背負わされて、殺人罪で刑務所行きだよ。
「ところがそいつの血液型は、A型でもAB型でもない、O型なんだ。つまり、本当の父親なんかじゃありゃしない」
――わかるだろ? わかるよな?
「ちょっといいです? あの、言ってる意味はわかります。わかりますけど、どうして、そんなことをあなたが、知ってるんですか?」
――ああ、そうだよ、そりゃあ、そうだけどさ!
「まずは、彼に聞いてみてください。彼と、彼のお母さんの血液型のことを……それで、僕のいう通りだったら、さらに突っ込んだお話をさせていただきます」
そのかわり、自分のことは内緒にしてほしい。いずれ彼にもきちんと説明するから、今日のことはしばらく伝えずにいてくれないか……。
そう言い終わった時、千尋の顔には迷いがあった。
信じていいのか悪いのか……そんなこと以前に、やはり胡散臭いって顔付きが消え去っていない。
だから達哉は真剣な顔して、さらに声を強めて告げたのだった。
「これに、僕が得するようなことは何もありません。ただただ、天野翔太さんのことを思ってって、ホント、それだけっすから……」
するとすぐ、彼女はきっと何かを言おうとしたのだ。
スッと息を吸い込んで、そこでいっとき固まった。
だから何かを聞かれる前に、彼は慌てて声にする。
「僕のウチの電話番号です。もし、血液型がその通りだったら、必ずこちらに連絡ください。次に会う時には、何が起きてしまうかを、ちゃんとお知らせしますから……」
ポケットから電話番号の書かれた紙切れを取り出し、さっさと千尋の前に差し出した。
そして千尋はそれから、ひと言も声を発しない。
達哉が一方的にお詫びの言葉を声にして、部屋を後にしようと玄関に立っても、ジッと達哉の渡した紙切れだけを見つめていたのだ。
ただとにかく、後は彼女からの連絡を待つしかない。
最悪それがなかったら、天野翔太に直接当たって砕けるか……なのだ。
ところがだった。
彼女はトコトン〝せっかち〟なのか、はたまた行動力がすごいってことか? アパートを訪ねた日の夜遅く、いきなりまさみが達哉の部屋に現れるのだ。