241. 巡礼の翼が抗いて、王の翼に生え変わる

文字数 452文字

 鸚鵡(おうむ)は傷つかない美を愛した。
 小夜啼鳥(さよなきどり)は薔薇を愛した。
 山鶉(やまうずら)は故郷を愛した。

 巡礼者たちは過酷な旅に屈し、また一羽、また一羽と翼を折っていく。

 鳥の王・シムルグへの謁見を目指し、七つの海を越える。
 世界に再び秩序を。
 偉大なる王を。

 環境が牙を剥き、
 飢えが身を裂き、
 背信が夢を砕き、
 人間が肉を斬り、
 虚無が善を壊し、
 混乱が心を折り、
 絶滅が命を消す。

 現実に抗いし巡礼者たちは、数々の試練と犠牲の末、シムルグの頂に辿り着く。
 シムルグは、確かに、そこに在った。

 戦い続け、抗い続け、傷つき続け、それでも最後まで翼を折らず、頂を諦めなかった者だけが、その景色を堪能できる。
 己の王となる。
 自重に抗わず、頂に辿り着けるか。

 頂は一つではない。
 最高峰は存在すれど、山岳の価値は、高さだけでは決まらない。

 どの頂を選ぶのか。

 見目麗しい岳か。
 薔薇薫り立つ峰か。
 ふるさとの思い出の山か。

 それぞれの頂をシムルグが飛び、翼の一枚を求めて巡礼者が集う。
 新たな王となる。

 幸福がGDPで計れるものか。
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