247. 過去に依る

文字数 554文字


 未来は恐ろしい。背後に忍び寄る肉食獣では生温い、自分の影から生える死神の鎌だ。予測できず、予防できず、認識の外から魂を刈り取る。
 白紙ではない。可能性は既に塗り潰され、もう何も信じられない。

 17世紀のとある人々は、過去を選んだ。
 その過去は、絶対だ。

 けして変わらない。
 アンサンブル予報のように無数の解答を示さない。
 確率にも範囲にも縛られず、単一に()られることもなく、ただそこにあった。

 良し悪しは計れない。
 省みることも、推測することも出来ない。
 その過去がいまであった試しはなく、時の連続性を否定する。

 過去が「あったことのないかつて」だとしたら、私のいまは、過去に属することなく、どこに消えていくのだろう?
 いずれいまとなる私の未来は、どこに降り積もるのだろう?
 虚無に。虚空に。

 いまと未来は消滅し、過去は絶対化する。

 崇拝する。
 揺るがなきものに心酔する。
 誰も正しさを教えてくれない世界で、なんと心地よいのだろう。

 そして、なんの救いにもならない。

 省みない。分析しない。探らない。疑わない。解読しない。
 完璧は、絶望だ。
 得るものは何もない。

 過去崇拝者の遺伝子は、私達にも遺っている。
 未来の黒紙か、過去の絶望か。

 何を選んでも過ちなのだから、選んだことだけが、唯一、光るものとなる。
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