218. 装飾② LBBの優越

文字数 672文字

 オオフウチョウのオスが枝の上を跳び回る。
 黄金の飾り羽――体長より長く、全体は扇のように広い――が背から立ち上がり、火炎の如く乱れ舞う。一心不乱に飾り羽を揺らし、両翼を羽ばたかせ、天敵だらけの森で自己主張を譲らない。

 茶色い小鳥・スズメが尋ねた。

「死にたいの?」

「優しいだけじゃダメみたい。派手で危険な男でないと、交尾できないんだ」

 十、二十羽と集まれば、舞踏会は大盛り上がり、羽ハンターが樹々の後ろに隠れだす。

 後期ジュラ紀の羽毛恐竜アンキオルニス・ハクスレイは、白黒の縞模様を持つ翼を大いに広げ、真っ赤な冠羽で周囲を威圧する。

 茶色い小鳥・スズメが尋ねた。

「死にたいの?」

「オレ様を喰える生き物がいるか。オレ様こそ最強で、メスを総取りする権利がある。それを視覚的に証明しているだけさ」

 トンボを追うアンキオルニスの背後には、火山がそびえ立っていた。

 アステカ王は禽舎(きんしゃ)にワシ、カモ、インコなどを飼い、色とりどりの羽でマントを豪華に飾り立てる。

 茶色い小鳥・スズメが尋ねた。

「死にたいの?」

「私は王だ。奴隷と同じ格好をすれば、奴隷と間違えられるではないか」

 ケツァルコアトル一行が帰還し、王は呆気なく殺された。

 見た目が地味で注目を浴びない茶色い小鳥・スズメが言うには、

「平凡が一番だね」

 暴君がスズメが穀物を盗んでいると一方的に主張し、奴隷達に命令する。
 スズメを殺せ。

 十億人の奴隷は石を投げ、手づかみし、罠にはめ、一日でスズメを殲滅した。
 虫共の楽園のはじまりだ。

 収穫量は激減した。
 奴隷は餓死した。

 暴君は御殿で宴会を楽しんでいた。
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