55. 百鶴

文字数 405文字


 縁起を担ごうと、折り鶴の集会が開かれた。
 きっちり百羽、招集されたはずだが、集まったのは九十七羽だけだった。
 残り三羽の行方は(よう)として知れず、親折り鶴は目撃情報を集めることにした。

 一羽曰く、
「お姫様を救いに東に向かったんだって。僕も行きたかったなぁ」

 一羽曰く、
「赤子の手に(ひね)られたんだよ……くしゃっとさ……」

 一羽曰く、
「頭と尾が上がらなかったんじゃない?」

 噂話にろくなものはない。親折り鶴は嘆息し、捜索を打ち切ることにした。子折り鶴三羽居なくとも、親折り鶴一羽いればこと足りる。
 集会はつつがなく行われた。

 ある子折り鶴が、親折り鶴に尋ねた。
「その翼と尾の模様、ばらばらで面白いね。別々の正方形を四つ集めたみたい! 体も一回り大きいし、どうしたらそんな風になれるの?」

 親折り鶴は答えた。
「ルールを作る側になれば、簡単だよ」

 翼は三つも要らなかったので、潰すだけで良かった。
 ……百鶴(ひゃっかく)まで、残り四羽。
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