135. 旅の道づれ

文字数 429文字

 嵐の夜のことです。
 どんなに夜が更けても、旦那様が帰ってきません。

 不審に思った毒蛇は――大広間で尻尾を下にまっすぐ立ち、炎を吐いて蒼い華を咲かせている毒蛇は、仲間たちに相談します。

 ぴかりと光る蛍曰く、
「嵐のシャワーを満喫しているんだよ」

 赤い火の蜘蛛曰く、
「転覆しかけた船を襲って、水葬を楽しんでいるんじゃない?」

 色の黒い小鬼曰く、
「牛小屋に立ち寄って、晩餐の準備をしているのさ。屈強な旦那様の腕にかかれば、十頭は持って帰れるぜ」

 旦那様の信頼は厚いようです。
 自信に満ちた言葉を聞き、毒蛇も安心しました。

 禍々(まがまが)しく美しい華で、大広間を着飾ります。
 魚の餌になった、主の帰還を信じて。

 どうして敵を殺しちゃいけないの?
 誰にも愛されない敵はいないから。敵も魔物も悪魔も、裏を返せば、友で生き物で天使だから。新しい憎しみが紡がれるから。

 殺し殺し合いだね。いけないの?
 できるなら、避けたいな。

 そんな世界に巻き込まれた時点で、負け方しか選べないから。
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