233. 小氷期 振り子のように:1300-1850

文字数 384文字

 樹木年輪、氷床(アイス)コア、ハドソン湾会社、祈祷儀式、穀物の価格変動などから復元した小氷期の気候は、ぼろぼろの櫛のように乱高下していた。

 霜が降り、冷気が地表を押し潰す。霧立ち込めて、視界が灰色に凍る。
 風は穏やかに、午後のひと時を揺らす。青葉がさざめき、ちぎれ雲が漂う。
 快晴の空に太陽が鎮座する。無限の熱線が大地を串刺し、渇き、乾き、飢えていく。

 豪雨、日照りが数年おきにやってくる。
 暖冬で暑夏が十数年続く。
 極寒に一気に至る。

 予測不能の時代の幕開けだ。

 凍ったテムズ河で氷上縁日が立ち、風景画家の描いた絵画は雲に覆われる。
 天候不順の責任を魔女に押しつけ、正義と焼き殺す。

 気候変動が一つの力学として、歴史をざわめかす。

 それはいままでも、これからも。
 振り子のように揺れ動き、ヒトは懸命に適応し、生きて死んでいく。

 風に抗わないで。
 風に身を任せ、一緒に飛んで。
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