162. レムリア大陸

文字数 544文字

 動物地理区を提唱した鳥類学者は、1864年、マダガスカル島とインド亜大陸で発見された近縁な霊長類の化石について、合理的な解説を試みた。

 かつてインド洋の一部に、巨大な大陸が存在していた。
 霊長類がてくてくと行き来し、それぞれの土地で化石となる。

 現実から仮説を導き、仮説を検証して真実に近似する。
 1915年出版のプレートテクトニクス論が仮説を葬り、安らかな寝床に連れ去った。

 ある協会設立者の夫人は、古代インド人が書き残した『ジャーンの書』を論拠に、遠い昔、巨大な大陸がヒマラヤ山脈の麓から南極圏まで広がっていたと語った。

 第三始新世の頃、その大陸は神々の手で破壊された。
 レムリア人は霊的な存在で、7種類存在する根源人種の一つだという。

 現実から妄想を(たくま)しく、幻想で塗り固めて真実と振る舞う。
 検証できないあらゆる事柄はナンセンスであり、議論するだけ時間の無駄だ。

 話の種にはちょうどいいかもしれない。

「ねえ知ってる? 失われた伝説の大陸は三つあってね、太平洋、大西洋、インド洋それぞれにあるんだけど、レムリア大陸説はプレートテクニクス論の前身と呼べるの。初め科学者が真剣に議論していた仮説が、オカルトに組み込まれてから一躍有名になるなんて、ほんと、人間って面白いね!」

「あっそ!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み