255. 笑えて、感心し、憧れるほど人間的

文字数 681文字


 交尾の後、オスのアカゲザルは誇らしげに立ち去った。
 よほど自らの性的成熟性、立派な御本尊を見せつけたのだろう。

 うっかり溝に落ちる。
 ださい。
 アカゲザルは素早く立ち上がって周囲を見渡し、他のサルの不在を確認した後、恥ずかしいことなど何もなかったと、さもありなんと歩いていった。

 研究の為、ヒヒに催眠鎮静薬を含んだダーツを撃つ。
 ヒヒは倒れてぐったりとした。

 別のヒヒが現れる。動けないヒヒの肩と尻に手をつき、仰け反りながら雄叫びを上げた。
 勝鬨(かちどき)の如く。
 睡眠鎮静薬の効果が、あたかも自分の力と言わんばかりに。

 ヒヒが車に轢き殺された。
 三日後、同じ車が同じ道を通る。
 待ち伏せしていたヒヒの一団は、一斉に車に石を投げつけた。

 あるチンパンジーは糞を投げつけるのが趣味だ。
 特定のヒトには特に。

 そのヒトはチンパンジーの檻がきれいなのをちゃんと確かめてから、
「やれるものならやってみな、ほれ、ほれ」
 チンパンジーを挑発する。

 挑発された彼は、未消化の食べ物を吐き戻して、容赦なくヒトに投げつけた。
 ヒトは汚物まみれ、彼は勝利のダンスを踊る。

 敵意や揶揄を向けてくる不愉快な奴らに、しがらみなく石やら糞やらぶつけられれば、どんなにすっきりするだろう。
 賢く倫理的な動物(注釈:ここでは人間だけ)には似合わないって?

 裏でねちねちネチネチ陰湿に報復するより、よほど美しい。
 ゲーム理論のしっぺ返し戦略と同じだ。

 人道と最善を体現する彼らがいる。
 見習うべきは、国民の為に当然行動しない政治家や、「成功は自分のおかげ、失敗は敵のせい」と思い込む自称勝者だけではない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み