189. 夜明けの妖精たち

文字数 395文字

 月暈(つきがさ)がきらきらと繋がって、妖精が生まれる。
 妖精は花輪のリボンを(ニワトリ)に結ぼうと、自身もまたリボンのように、弧を描いた。

 例えばこの後、枝や幹のように茶色い屋内と、夜明け前の青い外世界、月を眺めて朝を待つ鶏、その鶏冠(とさか)の朱、極彩色の羽の鮮やかさ――そう描写を続けたとして。

 夜明けの妖精たち。
 その絵の奇抜さの数パーセントでも伝わるのだろうか?

 文で伝えるのが物書きか。
 絵を楽しむなら、視るのが一番だろう。

 一つ一つの要素を描いても退屈だ。

 五十人を超える個々の妖精の羽根模様、表情、体躯、三羽の鶏の配置、鶏冠の偉大さ、花輪の花々の種類、フェアリーエッグの色とりどりの輝き、遠景の町並み、水平線。

 稚拙な描写力を恨めばいいのか、学べばいいのか。
 端から無駄な努力だったか。

 そう問えたこと。
 それだけが収穫かもしれない。

 あらゆる物事の価値を最終的に決めるのは、いいねの数じゃない。
 自分だ。
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