185. クリスマス・イブ

文字数 329文字

 しんしんと雪が降る。

 山小屋の屋根、その斜面の一部だけが、白く染まっている。
 あと小一時間もすれば、山並みも、下草も岩々も、白銀に埋まるのだろう。

 白い妖精たちは粉砂糖のように、まだ白に染まらない景色を白く覆っていた。
 帰り支度に精を出す。

 丁寧に太鼓を運ぶ。
 静かに馬の玩具を掲げる。
 すーっと靴を引っ張って進む。

 岩が白化粧を始める。
 張りつく結晶に、枝は為すすべない。
 白き幻想は雪に紛れて、めいめいに浮かんでいた。

 メリークリスマス!
 異教の神々でさえ、生誕祭を祝うのだろうか?

 受け取ったプレゼントを歓び勇んで巣に帰る途中?
 子どものプレゼントを横取りした最中?

 その表情から読み取れるものはない。

 妖精も、雪に触れて、冷たいと感じるのだろうか?
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み