87. 広告の数式

文字数 808文字

 r[x, y] = Σ[i]{(M[i, x] - AVE(M[x]))(M[i, y] - AVE(M[y]))} / √{Σ[i](M[i, x] - AVE(M[x]))^2 ・ Σ[i](M[i, y] - AVE(M[y]))^2}

 ※r[x, y]は、ある人iにおける事象x, yの興味関心の相関係数
  事象x, yの組み合わせを無限に計算し、個々人の相関行列を作る
  その近似度によって、個人を「自撮りに夢中」「メイク姫」「鸚鵡(おうむ)中毒」などにストレオタイプ化する

 ※※AVE()は平均値。上バーの書き方教えて

 鸚鵡が相関行列と(にら)めっこしていた。友達が欲しかったみたいだ。自分と似た鳥たちに会いに行くことにした。

 鸚鵡は人間の言葉を話すのが好きだった。
 人間とコミュニケーションの相関が強かった(からす)曰く、

「ゴミ出しのタイミングが肝だぜ。奪い合いさ! エコロジー精神に欠けたコンビニ人間の情報は特に稀少でよ、腐った唐揚げ三個で売れるんだわ」

 鸚鵡は宝島とドリトル先生が好きだった。

 宝島と海賊の相関が強かった(かもめ)曰く、
「エルドラドとかマジ大爆笑! 地に足つけて生きろよ、人間だろぉ? それで難破して木屑になるとか、妄想すっと生き生きすんだよなぁ?」

 ドリトル先生と蝸牛(かたつむり)の相関が強かったハゲワシ曰く、
「う・ま・そ・う……」

 巣に戻った鸚鵡は、相関行列の書かれた紙を(つつ)き破った。
「役立たず! 僕と同じ因果で正の相関と思ったのに、全然じゃないか!」

 鸚鵡は諦めなかった。
 宝島が好きな理由。
 鸚鵡が出てくるから。わくわくするから。ジョン・シルバーを憎めないから。

 同じ因果で宝島が好きな鳥ならば、「宝島」と「鸚鵡」、「宝島」と「冒険譚」、「宝島」と「片足の男」がすべて正の相関と仮定できる。

 あくまで仮定だ。より細かく条件を絞ったほうが正しいかもしれない。
 鸚鵡は再び相関行列と向き合った。

 七羽目で、親友と出会う。
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