33. 層雲

文字数 197文字


 子猫が歩く、音無く歩く。
 そっと地上に訪れる。

 早朝に人々が散歩する。ビル群が背丈を自慢する。公園の木々が湿り気に歓ぶ。
 すべてを優しく包み、神秘のヴェールの中――雲に(いざな)う。

 ぼやけた視界。
 白く灰みがかった青。
 冷たく湿った感触。
 やわらかな風吹かば、通り過ぎる清涼感。

 気づくと何処(いずこ)かに消え去り、足跡一つ残さず、流した(なみだ)も忘れ、青空。

 冬の日の澄み切った青空が、魔法みたいに広がっている。
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