41. メンダコ

文字数 222文字

 メンダコが海底でじっとしていた。
 釣鐘状の体を平たく潰し、黒い目は淀んでいた。

 シーラカンスが逆立ち踊りに誘ったが、肉鰭(にくひれ)を動かすだけだった。
 ラブカが七つの海を支配しに行こうと誘ったが、頭の肉鰭を動かすだけだった。
 クダクラゲ目が一つにならないかと誘ったが、兎の耳みたいな肉鰭を動かすだけだった。

「不動は嬉し、不動こそ華」
 大仰な口調は、神様のようだ。

 幸せは深海生物それぞれ、水圧に負けない柔らかさがそこにある。
 ああ、メンダコになりたい。
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