220. 機能② 未来のオーケストラ

文字数 543文字

 マイコドリ達は枝の上で踊りながら、パーカッションを決めていた。

「カチカチカチカチ……」
「パチン!」

 体や翼、尾羽に翼を打ち鳴らし、メスとバードウォッチャーをメロメロにする。
 舞に音楽はつきものだ。

「キィーン――」

 キガタヒメマイコドリが両翼を持ち上げれば、唐突に、かん高い美音が鳴り響く。
 打音とは異なる高速振動音は、まさに弦楽器の(たっと)い音色だった。

 打ち鳴らす音「カチカチ」「パチン」、風切音「ブーン」「ヒュルヒュル」は理解できたが、両翼を背中に上げて孔雀のポーズで鳴らす「チーン」振動音が理解できない。

 マイコドリ達は尋ねた。

「その音はなあに?」

 キガタヒメマイコドリが答える。

「可能性を突き詰めた先にある、一つの羽の未来さ」

 イノベーションは伝播し、模倣され、研磨され、やがて妙なる調べを紡ぐ。

 羽が羽を鳴らし、体鳴楽器――シンバルのように響く。
 羽軸の中空を生かし、気鳴楽器――フルートの羽が進化していく。
 特異な羽同士を1秒間に107回擦り合わせ、弦鳴楽器――ヴァイオリンの羽は既に存在している。

 鳥の歌声は、いつの時代も美しい。

 鳥たちの未来のオーケストラは、どんな感動で私たちを包み込んでくれるだろうか?
 満員御礼は間違いない。

 聞き惚れる資格は、まだ残っているだろうか。
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