214. 綿羽② 熱中症対策

文字数 535文字

 ヒトの熱中症対策について、何十年も研究した専門家が語った。

「水と塩をとれ。日陰に留まれ。日向では肌を露出し、直射日光を帽子で防ぎ、通気性の良い衣服を着ろ。エアコンをがんがんかけろ」

 鳥の熱中症対策について、生まれて数年の小鳥が語った。

「羽で熱を遮ります。日射と並行に、背中をずらします。羽を立てて裸域を風にさらします。裸域、脚、嘴の血液量を20倍に増やします。(あえ)いで一分間に数百回呼吸し、気嚢(きのう)で気化した水蒸気を押し出します」

 両極の冬と赤道直下の雨季、生身で暮らせますか?

 植物の遺体を燃やし、エアコンで無意味に全てを冷ますことなく、鳥から剥ぎ取ったダウンを着たまま42.195キロ完走できますか?

 コウノトリなら休憩なしで2~300キロ走れるという。

 成層圏に硫酸塩をばらまく。
 海に鉄を補充する。
 小惑星を砕く。

 資本家が「僕がみんなを救うんだ!」と正義の振りをして気候に介入する前に、化学繊維と羽の融合が成功しますように。

 仮に介入し、狂った気候下で今日氷点下明日50℃を超えても、鳥類は生き残るか。
 気候変動より悪質な天敵が死に絶え、逆に喜ぶかもしれない。

 なら、いいか。
 ヒトの味方でもあるまいに。

 資本家・独裁者一人の罪を全人類が引き受ける。
 いつも通り。
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