92. 漸層法

文字数 209文字


 猟犬が獅子(しし)を追いかけていた。
 鍛えた四足を躍動させ、弾丸の如く草原を駆け抜ける。
 鋭利な(まなこ)が獅子の尻を捉え、いまにも噛み付かんと舌を出しては(よだれ)を棚引かせた。

 獅子が向き直って吠えれば、きゃうーん、猟犬は仔犬みたいに逃げ出した。

 この世にこんなに情けない猟犬がいるのか。
 この世にこんなに思い上がり、しかして勇気無き猟犬がいたか。

 この世にこんなに――ああ、もちろん、たくさんいるとも。猟犬でも人間でも、寓話作家にも。
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