158. 絶滅のレシピ

文字数 610文字

 絶滅の方法をおさらいしよう。
 何かを習得するには、反復練習が不可欠だ。非常に洗練された技術とはいえ、次の絶滅に備えて、下準備を怠らないように。

 野生のラン・サティリオンは単純だ。
 噂を流せばいい。粉末状にして飲むと、七十回を越えても夜が終わらないと。

 夜な夜な山に入り込む、男たちが採り尽くしてくれる。

 リョコウバトが巨大な群れを成し、空を埋め尽くす。
 空に向けて、散弾銃を放て!

 何十万羽と落ちてくる。肉はパイに詰め、足は飾りつけに、翼や羽毛もカネに変換だ。十年くらい繰り返せば、層雲のように太陽を覆った鳥たちは消滅する。

 通称「元祖ペンギン」、オオウミガラスはもっと簡単だ。
 近づいて、撲殺。以上。

 船の甲板が死体に埋め尽くされたって? 羽毛だけ剥ぎ取ればいい。そりゃあゆっくりと凍え死ぬけれど、漁師は痛みを感じない。

 予習もしておこう。

 小鳥のズアオホオジロ。胃がはちきれんばかりに強制給餌して、ブランデーで溺れさせて、足から骨、内臓、血と、全身をがつがついただく。

 これがヒトの伝統で、将来に受け継ぐべき素晴らしい遺産だ。

 絶滅危惧種のサメ。捕まえる。ヒレを切る。海に投げ入れる。海底に沈み、泳げず、鰓呼吸もままならず、失血死か生きたまま喰われる。

 もちろん、ヒトは痛くない。おいしいふかひれスープに舌鼓を打つ!

 じゃんじゃん食べて、じゃんじゃん絶滅させよう!
 経済合理性、伝統、高級食品が合言葉だ!

 うまい!
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