230. もう一つの進化

文字数 518文字

 腰蓑(こしみの)、槍、猫背、背は低く尖った顎の野蛮人が、左から右に向かって徐々に背が高く、顔が平たくなり、スーツを着たクローン、最後に重すぎる巨頭でスマホにかぶりつく。

 進化は、そんな単純じゃない。

 同時進行的で、数々の分岐と絶滅があり、災厄がすべてをひっくり返す。
 進化が必ずしも進歩とは限らない。

 ヒトはアイディアを分け与えた。
 ヒトは親から子へ、師から弟子へ、友から友へ、知識を繋いだ。
 ヒトの一生では得られない知識群――超ひも理論とハドレー循環をあなた個人で発見できた?――に発展し、それは文化と呼ばれた。

 体外で水を貯蔵する「水筒」技術が、発汗を許容した。
 体外で消化を促進する「加熱」技術が、消化器官を小さくした。
 文字を文字として認識することで、そう出来るよう脳が配線を変えた。

 文化的に進化し、進化した文化を操る者が生き残り、遺伝的に進化する。脳が適応して機能的に変化する。
 一巡して再び文化が進化する。

 文化がヒトを作った。
 ヒトが誇るべき唯一の点は、社会的学習能力、集団脳の利用だ。

 多様性を基盤に、私は、組織は、ヒトは、この「変動し、不確実で、複雑で、曖昧な」世界を生きていく。
 進化を進歩と信頼して。

 より良き明日の為に。
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