112. 森林の宝くじ

文字数 395文字


 わたしの夢は、商業作家になることだ。
 新人賞に三度応募し、すべて一次選考で落ちた。
 諦めた。

 獅子の夢は、勇気を抱くことだ。
 仲間と共に旅に出た。深い谷を五度飛び越えた。悪い魔女に敢然(かんぜん)と跳びかかった。
 長い旅路の果てに、獅子は森の王となった。

 ブナの夢は、後継者を残すことだ。
 五年に一度、三万の種子を作る。三百年、続ける。
 生涯に百八十万の種子を放ったとしても、夢が叶うかどうかは、はっきりと言えなかった。

 ポプラの夢は、十億分の一の確率で成就する。
 毎年、二千六百万回、挑戦する。
 諦めない。

 (すっぽん)は月にはなれない。月のようにはなれるかもしれない。甲羅に光条を刻めばいい。
 適した夢を知ること。環境を整えること。修正を忘れないこと。
 最初から最後まで、運。

 それを体で理解して、やっとスタートライン。

 あなたは、ポプラのように、その夢を追えますか?
 せめて獅子のように、立ち向かいたい。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み