129. 生で音楽を聴く

文字数 436文字


 (かも)のコンサートホールに無数の鳥たちが集まった。
 ナイチンゲール、白鳥などだ。

 演奏会は大成功した。
 録音音源は鳥類界で再生数一億回を突破し、両生類界、哺乳類界まで進出した。

 音楽好きが、蛙、栗鼠(りす)面蛸(めんだこ)が、各界の方々からコンサートホールに詰めかける。
 録音では納まらない熱、一体感、波動を求めて、客席に並ぶ。

 ナイチンゲールの歌に高鳴る。
 白鳥のハープの羽遣いに目を見張る。
 鴨たちの息の合ったアンサンブルに息を呑む。

 わたしが演奏し、あなたが聞き惚れる。
 あなたの感動が反響し、わたしに届き、わたしの感動となり、奏でた音にのせて返す。
 感動が行き交い、高め合い、際限なく上昇していく。

 聴衆と演奏家が、空気を通じて身も心も共鳴する。
 いま、ここに、わたし達が在る。

 その瞬間を愛する。

 気温、湿度、気圧、大気組成、朝夕夜、月の満ち引き、外の戦争、観客数、息遣い。
 ホールの音響空間、楽器のコンディション、演奏者の配役。
 いまの心。

 けして再現できない感動が、そこにある。
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