116. 森林のものは僕のもの

文字数 445文字


 わかりやすく、擬人法に頼ろう。
 芸がないと非難されれば、ごめんなさい、謝ります。

 啄木鳥(きつつき)が二の腕に穴を空ける。
 滴る血を舐める。

 油虫(あぶらむし)が頭皮に口を突き刺す。
 ちゅーちゅーと血を吸う。

 癭蜂(たまばち)が手の平に卵を植える。
 幼虫は皮膚を改変して瘤を作り、瘤の中で安全に、奥に奥にと手を食べ進める。

 木喰虫(きくいむし)が横腹を破り、内臓付近に卵と細菌を残す。
 細菌が白血球を無効化する。幼虫はハンバーグのような内臓にニコニコとかぶりつく。

 草原を追いやられた鹿が、町にやって来る。
 背中の皮膚を剥がす。がりがり食べる。まずいけど、他に草がない。顔の皮を門歯で噛む。

 楢茸(ならたけ)が足の裏から登ってくる。
 肩から子実体が生える。手に足に菌糸体が走り、血を盗み、肉を喰う。子実体が全身を覆えば、中は空だ。

 潰した蚊に悔いますか?
 キャベツに同情しますか?
 屠殺された豚の痛みを想像して豚汁を呑みますか?

 餌を思い遣る生物はいない。
 生きねば。

 敵を、餌を、愛し護りたいと叶うほど、わたし達はまだ強くない。
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