53. 龍譫車

文字数 242文字


 折り鶴が四羽、翼の裏と裏をぴったり合わせている。
 風車のように、水車のように、一弁だけ散った竜胆のように。
 青紫色の花びらには気品があった。

 どうして一弁散ったの?
 風が強くて、旅立ちたい一羽の心が、(あふ)れ出たから。

 どうして一弁散ったの?
 雨が強くて、優し過ぎる一羽の心が、溶けてしまったから。

 どうして一弁散ったの?
 光が強くて、情熱的な一羽の心が、熱く高く燃え上がったから。

 残った四弁は、くるくる、くるくる、雨風光と触れ合いながら、去った一弁を待っている。
 ずっと待っている。
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