23. お相伴妖精

文字数 446文字


 いくら食べてもお腹の空く狼が、空腹に倒れていた。

 羊が通りかかって、狼が弱弱しく言うには、
「水を取ってきてくれ。元気が出れば、自分で食べ物を見つけられるから」

 自分の肉の味を知らない羊が、親切心から水を恵むと、狼は取り戻した元気で羊に()みつき、食べてしまった。

 山羊が崖で草を食んでいた。

 傍まで行くのは怖いから、狼が優しく声をかけるには、
「もうすぐ雨が降るよ。崖が濡れて足元が覚束(おぼつか)なくなる前に、急いで下りるおいで」

 慎重さの足らない山羊が、怯えた心に従って崖を下りると、狼は駆け出して山羊を切り裂き、食べてしまった。

 子どもが泣いていた。老婆が子どもを脅して言うには、
「泣き止まないと狼に食べさせちまうよ!」

 偶然戸口の前にいた狼が、わくわくと口を開けていると、子どもが外に投げ出されて、狼の口にすっぽりと収まった。
 やっぱりむしゃむしゃと食べてしまった。

 狼に()りついていた妖精は、狼の栄養を吸い尽くし、詰まる所、狼はむしゃむしゃと食べられてしまった。

 妖精はまた別の獲物を探し始めた。
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