37. 乱層雲

文字数 372文字


 美しさコンテストが開催された。

 快晴に浮かぶ綿花、女神フリッグが織り上げた絹、暗く分厚い被せ布、三者が競い合う。

 綿花と絹が接戦を繰り広げ、同率優勝となった。
 被せ布は、見向きもされなかった。

 ボクシング大会が開催された。
 雷撃で必殺の暴れ(きのこ)、光輪で目を(くら)ます薄いマント、ジャブの絶やさぬ被せ布、三者が競い合う。

 暴れ茸は圧倒的な破壊力で、薄いマントは技巧で優位に立った。
 被せ布は粘り続け、けしてジャブを休めなかった。

 被せ布がぎりぎり優勝した。

 若いロックスターが尋ねた。
「どうして雨は下から降らないんだい?」

 詩人は答えた。
「被せ布が自由だからさ。風の吹くままに、世の中を堪能(たんのう)している」

 クラウドウォッチャーは答えた。
「凝結核と凍結核が肝だ。温かい雨と冷たい雨、それぞれ説明しよう。十分もあれば釣りが出る――被せ布の神秘をお伝えしよう」
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