159. リンゴ酒のレシピ

文字数 377文字

 その豚は吞兵衛だった。
 夜な夜な小屋を抜け出しては、リンゴ酒が満ちた桶の縁に(ひづめ)をかけ、全国のサラリーマンかサラリーウーマンのように晩酌を楽しんでいた。

 長寿の秘訣は、我慢しないことだ。
 何せ水がいい!

 そう同小屋の兄弟に話していたとか、いないとか。

 ある日、その豚はいなくなった。
 どうせ酔っ払って森に迷い込んだのだろうと、兄弟は気にかけなかった。

 豚と同様に、ヒトが千鳥足で徘徊を始める。

 今年は特に多い。
 今年のリンゴ酒は特に品質が良く、なかなか晩酌が止まらなかったという。

 豚の発見は、あと少し先のこと。
 おいしいリンゴ酒の秘訣も、同時に明らかになった。

 大丈夫!
 腐った米、カモメ、蝸牛(かたつむり)、牛の睾丸(こうがん)、芝刈り機でさくっと切れた足の指だって、ごくごくと気持ち良さそうに喉を通過している。

 今日の朝食だって、トーストにかりかりベーコンを載せたでしょう?
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