269. 陽気になりたいシアノバクテリア

文字数 1,107文字

 藍藻類とミジンコの会話。

「僕ってさ、一リットルあたり10億匹くらいいるじゃん? 空気が重いと日向ぼっこが楽しめなくて、糖の生産が滞るんだよね。ユーモアが良薬らしいけど、そんな雰囲気じゃなくて」

「そうだね! 思い切って、君が空気になりなよ!」

「僕がユーモアをかますの? うーん……。今朝鏡を見たら、繊毛が整わなくて。何回か泳いで撫でつけてもどうしても整わなくて……、って、よく見たら、鏡じゃなくて昨日分裂した僕だったよ! あははは! とか?」

「そうだね! あとはみんなの前で披露すれば、続いてくれるよ!」

「そ、それはちょっと、恥ずかしいな。真っ赤になっちゃう……あおこなのに。というか、君も手伝ってよ。ほら、例えばさ、ミジンコ並みに小さい? 馬鹿言うなよ、ミジンコはむしろ月並みでしょ。1000倍は大きいよ、藍藻類の。……とか?」

「そうだね! 最高だ! でもボクより適任がいる。文化を破壊する掟破り・扇動者/ユーモアと情熱を抱く・カルチャーキャリアー/勤勉で寡黙に優秀・秘宝タイプだ。ボクのお勧めは、扇動者・葉緑体だね」

「ああー、あいつね。うまくやったよね。地球近辺散策しても、見ない日なかなかないもの。でもそれって、どちらかというと、体制に迎合した裏切り者じゃない?」

「そうだね! 君から見るとそうだ、でも反対から見ると?」

「原核生物界を破壊して真核生物界を創造した神様かー、ちぇっ! 僕も天文学的に殖えたかったな」

「そうだね! そういうサプライズを昇華させて、陽気な文化を定着させよう! 食べられた先に定住しちゃったから、その日一番糖を生産した藍藻類には、引っ越し用段ボールをプレゼント! これでいつ捕食されても荷造りできる!」

「機会を逃すなってことか。めざとく、些細なユーモアを差し込めってこと?」

「そうだね! 他にも、イエスアンドとかあるよ!」

「何それ?」

「そうだね! 即興コメディーの極意さ! 肯定してから一言加えることで、楽しく会話が続くそうだよ!」

「そうか! だから君はずっと、そうだねって言ってたのか」

「そうだね! 既に条件反射の域さ! チンアナゴってヒトの腕から飛び出てくるんでしょ? と言われても、そうだね! って答えそうで、怖いくらいだよ!」

「そうか! 〆どころが見つからないね」

「そうだね! もう微生物ネタは思いつかないよ!」

「そうか! 〇■▼××↑↑!」

「そうだね! ▽||★◎→↓!」

 かくしてミジンコからユーモアを知った藍藻類は、陽気な空気づくりに励むことにした。
 それは38億年前、こことは違う地球の話だ。

 別の地球の現在。
 みんな笑い過ぎて顎が外れ、スムージーが大ヒットしたとさ。
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