187. 夢見る囚われ人

文字数 513文字

 少女が巨鳥に背を預け、安らかに眠っている。

 左手は鎖に繋がれ、暗い森の奥、孤独に横たわる。人を特別視しなければ、孤独ではない。赤い槍持ち、草木伸びる何か、赤銅色の老人に囲まれている。

 鉄の騎士が妖精を伴い、威風堂々と現れた。
 地に刺した刃が硬い。

 闘争の香りが立つ。

 少女は夢の中、現実の悲劇に気づかない。
 野の花で花輪を作っているのか。家族と夕食を共にしているのか。恋人との逢瀬を楽しんでいるのか。

 血生臭いニオイとは縁遠く、安穏としていた。

 夢見る者に、現実は見えない。
 叩き起こすには強烈な刺激が必要だが、寝起きが悪いのは予想がつくだろう。

 補足しよう。

 目を開けて夢見る者に、現実は見えない。
 叩き起こすには強烈な刺激が必要だが、目が開いているのだから、むろん躱される。目をそらされる。強引に視線を合わせようとも、抵抗は明らかだ。

 対策は?
 無い。あなたのいう現実だって、あなたの夢でしょう?

 目を開けて夢見る者って、誰だったの?

 別々のストーリーバースで生きる者共が、意思を共有するには対話しかないけれど、別々のストーリーバースで生きる者共の戯言を誰が聴きたがる。

 わたし達は、ネルソン・マンデラになれるだろうか?
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