6. 少数の法則

文字数 360文字


 兎と亀が競走した。
 兎は亀を(あなど)り、途中で寝た。
 亀が勝利した。

 兎と亀が再び競走した。
 兎は途中で猟犬に出くわし、逃げ出した。
 亀が勝利した。

 兎と亀が三度競走した。
 兎は不測の事態に備え、食糧や武器を背負って走った。重すぎた。
 亀が勝利した。

 兎と亀がもう一度競走した。
 兎は勝利の秘訣(ひけつ)を探ろうと、亀の後ろを追い続けた。最後までそうした。
 亀が勝利した。

 兎と亀が百回目の競争をした。
 兎は普通に走った。
 兎が勝利した。

 兎の勝率は九割を超えたという。

 試行回数が少なければ、偶然か実力かわからない。
 たまたま成功したからといって、偉ぶるのは止めよう。
 たまたま失敗したからといって、悲観するのは止めよう。
 挑戦あるのみだ。

 命と時間がある限り。
 生きている、その軽視しがちな最高の幸せが、不思議と続いているうちに。
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