77. 鉄砲雨

文字数 309文字

 突発的な鉄砲雨に打たれて、僕は木陰に走り込んだ。
「あ……」
 先客がいた。気になってる女の子だった。

 会釈だけして、横に並ぶ。
 ともに雨空を見上げ、叩きつけるような雨音に耳を傾ける。

 二人きり、同じ首の角度、同じ退屈。
 高鳴る心臓が閉鎖的な木陰に響き、熱量ばかりが増していく。

 意を決して口を開いても、その小さな声は、激しい雨音に溶けて消えた。
 臆病な自分が情けない。

「そうだね」

 返答がある。思わず顔を向ける。女の子がやわらかく笑っている。

「雨、止まないね」

 女の子は僕の言葉を繰り返した。
 胸がこみ上げる。

 僕はもう一言、他愛無い言葉を重ねた。

 未来は鉄砲雨の中にある。
 雨に湿った感触は、部屋の中では味わえない。
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