209. ホミニンからヒト、ヒトからガン

文字数 734文字

 3000万年前、アフリカは熱帯雨林に覆われていた。
 800万年前、気候は寒冷・乾燥に傾き、サバンナが広がる。

 乾燥に強いC4植物の草原は、もし定期的に燃えなければ、低木の藪になり、すぐに森林となっただろう。
 炎がサバンナを維持し、サバンナがホミニンを育てた。

 燃えるサバンナで、ホミニンは何を学んだのだろう?

「あら。このお肉、とってもおいしい。柔らかくてよく噛めるもの。胃もたれ防止に最適ね」
「新芽を求めて動物たちが集まってくる。ちょっと屠って帰ろうかしら」
「暖かいわ。持ち帰って囲わなくちゃ」

 洞窟内で熱と光を求めて燃やし、炉端の会話が社会性を増し、焼肉から燃やさねば喰えない穀物料理に発展していく。
 かくして忌むべき農耕が始まったのだろうか?

 松明で獲物を追い詰める。
 野焼きで発芽の季節を決める。
 定期的に森に火を放ち、大規模火災を防ぐ。

 かつてヒトは炎と共にあり、炎を友として生きていた。

 林野火災が絶対的な悪とされ、化石燃料の燃焼こそ善という文化が育つ。
 隠された炎を礼賛する時代だ。

 山火事? すぐ消せ。
 すぐ消すから大規模化する? 大規模火災もすぐ消せ。
 小規模火災を放置しろ? 計画的な燃焼のせいで煙害が発生したら責任取れるの?

 原生林で暮らしたい! 火事はやだ! 命も家も守って!
 温暖化はやだ! 化石燃料減らすのもやだ! いままで通り快適に暮らしたい!

 アメリカ式暴飲暴食無限虚栄心年収十億円超えの生活を100億人が堪能し、そのうえ自然も護ってよ!

 2100年、自己増殖を続ける異分子を満たすために、どれだけの海、空、大地が貪られるのだろうか?
 まるで資本みたい。

 いつかヒトに戻れたらいいな。

 この願いも、所詮、やだやだやーだと同類のくせにね。
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