260. 愛鳥を愛で、鶏肉を貪る
文字数 818文字
「それと同じことを愛犬にもしますか?」
雄のサルを椅子に縛り付け、麻酔をかけずにペニスに電撃を与えて精子を採取する。十年間に241回、一回の採取で複数の電撃を浴びせる。
劣悪な動物実験を経て販売された薬物の有害反応の結果、毎年106000人が死亡している。
なぜ、ラットが、豚が、ヒトの代替品として完全なイコール関係で結ばれ得ると、勘違いしているのか。建前を得る為だけに殺される実験動物は、食品産業では年に十億匹を超えるという。
吐き気がする。
けれど、私は動かない。
都会に住む約半数以上の一般人が、他の動物(注釈:なぜかここではヒトを含まない)と付き合う機会。
検索サイトの向こう側。
ペット。
食品棚。
鳥の
檻の向こう側。
愛は偏見だからもてはやされる。
ペットと実験動物を同一視するヒトなどいない。
隣りにいないのだから。
食品棚の牛や鶏や蛸を愛するヒトなどいない。
生産者の顔が見えるラベルみたいに、カニバリズムで傷ついた鶏の苦悶の表情を載せれば別かもしれないが。
見知らぬ異国の貧民を自分の子どもより優先するヒトなどいない。
一口に他の動物と言えど、バードウォッチャーは鳥を偏愛し、愛猫家は猫カフェに足繁く通う。
「それと同じことを愛犬にもしますか?」
しないさ。
だからといって、愛犬以外の動物を食べない理由にはならない。
反逆なく踏み潰しやすい臆病な少年は虐めても、筋骨隆々の体育教師は虐めないでしょう?
体育教師が常に筋骨隆々かは知らないが。
道徳は最優先事項にはなり得ない。
せめて罪を認識しなければ。
――罪悪感で胸が苦しいと泣きながら、それでも殴ってくる相手を、ゆるせるだろうか。
動物には心がある。
情動を敬意の十分条件とするならば、彼らは敬われるべき存在だ。
ならば政治家も尊重してほしい。
テロリストも、侵襲的な動物実験を愛する外道も。
非道を極めるヒトと同列に扱われるなんて、他の動物たちが憐れだ。