175. アノマロカリス・カナデンシス

文字数 532文字

 頭部の欠けたエビの化石が採掘された。
 奇妙なエビということで、アノマロカリスと命名された。

 潰れたクラゲの化石が採掘された。ペイトイア・ナトルスティと命名された。
 ナマコの化石が採掘された。ラッガニア・カンブリアと命名された。

 この奇妙なエビ、付属肢でね?
 節足動物シドネイアの頭部に、二つ、ちょんちょんと付け足してみる。
 いや、胴体でしょ。二枚貝に似たトゥゾイアの殻からびよーんと伸ばしてみる。

 ナマコとクラゲが重なって採掘された。
 一緒に潰れたのかな?

 エビなら消化管を持つはずだ。奇妙なエビには存在しない。
 本当にエビ?

 ナマコとクラゲ、エビを巧みに組み合わせた結果、エビのような付属肢を持ち、ナマコのような胴体に十一対の(ひれ)を生やし、クラゲのように丸い口を持つモンスターが誕生した。

 アノマロカリス・カナデンシスは、過去いくつもの名を抱いたが、はじまりの名を引き継ぐ。
 めでたしめでたし。

 この潰れたクラゲ、アノマロカリスの口じゃねぇ!
 ペイトイア・ナトルスティは復活し、カンブリア紀の海で泳ぎ出した。

 科学なんて、こんなもの。
 今日の常識は明日の異端で、数百年前に葬られた異端がふいに蘇る。

 アノマロカリスが可愛ければそれでいい。
 カワイイよね? ねえ?
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