第30話◆大人と子供・・・改

文字数 6,170文字

ありのままの王女(むすめ)を見せるのは娘の幸せを願えばこそであり、娘を妻に望む魔王(むこがね)の人と(なり)を効率よく見()かす為である。
当の(セレナス)に何も告げぬのは、瑕疵(かし)を許されない王族の体面を最大限に尊重すればこそ、魔族に求婚される事実が産む体面の悪さを(いまし)めればこそ、娘が自由に意思を貫けるようにと願えばこそ。
女一人口説けない男に(とつ)がせてなるものか!! という父親心あり、断れば断ったで(かど)が立つことへの()政者の苦渋あり、魔王に向けた最初の布石でもあり。

「――なっ?!

セレナスを初め、誰もが驚きの目でグラディルを見る。
グラディルが一番敏感に反応したのは王女に対してだった。

「……手前(てめえ)っ、よくもそれで、人のこと―― !?

(様にならないんだから、もう……!)

ラファルドが不可視の力でグラディルの足を蹴る。
しかし、牽制(けんせい)しなければならない人物はもう一人居たのだった。

「近頃の猿は、なんて生意気な芸当をこなすのかしらね!」

「…………!!

殺し切れなかったグラディルの歯軋(はぎし)りは本来、不届きとして断罪されるもの。
だが、近衛(このえ)も騎士団もそ知らぬ顔だった。
グラディルを気の毒に思った――のではない。
主君の視線の在り処。それを強く意識した結果だ。
(いさかう)二人を見る目の意味深さを見て取ればこその無関心なのである。
いいとも悪いとも言えずに見守る国王を視野に収めつつ、グラディルの堪忍袋(かんにんぶくろ)が弾けなかったことを喜ぶべきだろうか、と、ラファルドは思った。
だが。

「……偽者(にせもの)王女が……!」

余計な手投げ弾が豪快に放り込まれる。

「――――!!

今度は流石(さすが)に、殺気を(はら)んだ空気がグラディルの周囲から湧き上がった。

「――――」

「…………」

それでも無頓着で居られるその神経の太さは、ラファルドでも感心するしかない。
任命責任という飛び火を恐れる玉座の国王(ちちおや)もきちんとハラハラしていた。

「…………」

長過ぎた沈黙が爆弾と間欠泉の不発を結論づけようとした頃。
ぷちっ、と、何処かで何かが千切(ちぎ)れる音がした。

「殿下! グラディル!!

ラファルドが二人を威嚇(いかく)()味に(たしな)める。
いくら何でも、これ以上は恥だ。

(これで欠片(かけら)でも飛び散ったら――折檻(せっかん)だ! 主君でも友人でも、何でもないからね!!

クリスファルトは兄の同情を送り、宰相はラファルドの胸中が聞こえていたかのように(うなず)く。
国王は気配も感情も消して窺っていた。
果たして。

「――ふんっ!」

「けっ――!」

二人とも小さく悪態を付いて、そっぽを向いてしまう。

「…………」

ため息をつきたいのがラファルドであり、ため息を聞かせたのが国王を初めとする一同だった。



「今日は先方の相談事に(かこつ)けて、見合いの段取りを組むはずだった――のだがなあ……」

「……まあ、とんでもないことになりましたね……」

ラファルドの他人事のような相槌が気に(さわ)ったのか。

「貴様……。申し開きをせねばならぬことが、(いま)だ在るのを失念してはおるまいな!?

多分に大人気(おとなげ)の無さが透けていたが、場の空気が一瞬で引き締まった。

「……と、申されますと?」

ラファルドは真剣に聞き返してしまう。
心当たりはもう無い――はずだった。
けれど、国王の額に浮かぶのは青筋である。

「貴様!! セレン(ちゃん)の頬に赤味が差している(ように見える)のは気のせいか?!

「いや、気のせいではあるまい!!」と続くはずだったが。

「…………」

それよりも先に玉座の間の空気が一斉にだらけてしまった。

(……ああ、そんなネタもありましたっけか……)

王女の頬に赤味を差させた犯人(ラファルド)の胸中は、良識ある大人達の本音だ。
(がら)みの案件では(割と簡単に)馬鹿になる国王は臣下達には食い飽きた日常の一つに過ぎず、玉座の脇に並び立つ腹心二人ですら顔を明後日(あさって)(そむ)けて、他人を決め込んでいる。

「――ぬ!」

放置すれば尻すぼみになっただろう焼け木杭(ぼっくい)に火種を供したのは、セレナスだ。

「お父様。…………その、これは――」

(うつむ)いたのは、説明に適した言葉を探しあぐねたから。
赤面は恥ずかしさに身を()がしたから。
……だったのだが。

「……どうした……? ……まさか――!」

この世の終わりが間近に迫ったように、国王の表情は暗澹(あんたん)としていた。
家臣の視線などどこ吹く風である。
国王(ちちおや)がこれ以上変に(こじ)らせる前に、犯人は自己申告を選んだ。

(わたし)が、頬を張らせて頂きましたので」

「何だと――!?

途端に、国王(ちちおや)は大人気無い怒りで殺気立つ。

「貴様!!!」

(わたくし)が、王族として未熟だったのです!!

「……殿下……」

炸裂(さくれつ)しようとした激怒に割って入ったセレナスに、誰もが目を丸くした。
(かば)われたラファルドに至っては、思考が停止しかけていた。
まさか灸の一つや二つで、態度や思考が改まるとは思ってもいない。

「…………」

険しい顔でラファルドとセレナスを見つめる国王。
疑惑に満ちた眼差しにも、セレナスは動じなかった。

「学ぶと期待されなければ、釘を刺す意味が在りません。お父様、ラファルドを(とが)めるのはお止め下さいませ」

「しかし!」

「魔王陛下への嫌がらせだという今日の騒動」

親馬鹿を発症させている国王を構うのは時間の無駄だと割り切っている。
ラファルドは王女の言葉に刺激され、自然に考え込んだ。

(そういえば……黒幕は別に居る、って――。……黒幕……)

「大変な事態になった可能性が高かったとは、もう()存知のはず。私への叱責は当然の帰結。(おん)厚情を甘受し、庇われることの方が不甲斐(ふがい)無く、居た(たま)れないのです」

(魔王陛下の手土産(てみやげ)――は、黒幕の意図を(くじ)く物……? 〈月神(がっしん)の泉殿〉で不意になった――役割を失った、治療薬……獣魔化……。獣魔化とやらが黒幕の差し金……?)

「しかし……、!」

堂々と気を逸らしていたラファルドに、国王はぎらりと目を光らせる。

「……?」

「――――」

だが、ラファルドが気づこうとすると、知らん顔を決め込むのだった。
王として、先達として、当然のことで腹を立てるならまだしも、個人的な事由から娘馬鹿を拗らせているだけでは父親(しんゆう)譲りの可愛げの無さで逆ネジを食わせて来るのがラファルドである。
そもそも、神祇とは神と人の仲立ちを旨とする者。国家の最高主権者とはいえ、国王に(へりくだ)ることは必須の素養ではない。
勝ち目の無い喧嘩は吹っ掛けるべきではないと学習するしかないのである。
そこへ、父親の百面相が筒抜けだったセレナスが気を利かせた。

(ちょっと! 少しは私の苦労を買って下さいませんこと!? 娘の私が言うのもなんですけれど、()ねると鬱陶しい父でしてよ。()ちます?)

臣下では追従(ついしょう)するしかない国王の我儘(わがまま)を未然に消火しようという意図に、ラファルドは丸くなろうとする目を苦労して抑えた。

(……え、あ――、それは……面倒臭そう(百面相だけなら、眺めてて飽きないんだけど)、ですねえ……)

実は知っている。(セレナス)から釘を刺されるまでもなく。
何せ、父ディムガルダが子守唄代わりに聞かせた愚痴の一つが、『娘が(から)むと、途端に駄目で馬鹿になる親父』のことだ。
自然と、色々な事を覚えてしまった。
加えて、ディムガルダは王宮に出仕する時、何故かラファルドを良く連れて行ったのである。
出仕する時は大抵、二人きりでの打ち合わせだ。
そして、王宮でのラファルドの世話係は国王だった。
親友直々の御指名には拒否権が存在しなかったらしい。
当然、国王がセルゲートの館に滞在する時は(幼い)ラファルドが接待担当だった。
やった事はと言えば、国王の膝の上で暇を持て余しただけなのだが。
父曰く、「セットにしておいた方が問題が無くていい」とのこと。
当主として辣腕を揮っていた頃の判断である。異を唱えられる者は皆無だった。
懐かしい思い出はそっとしまっておく。
ただ、折角なので、セレナスの意図に乗ることにした。

「頬を張ったことは()びても仕方が在りません。必要だと思えばこそ、()えた(きゅう)ですので」

「――なっ!?

「おほん!」

宰相の(せき)払いが響いた途端、怒りに我を失いかけた父親の顔から威厳ある国王の顔に戻る。
ただ、往生際の悪さまでは堰き止められなかった。

「…………しかし、(あと)が残るというのは――、やり過ぎではないのか……?」

「い――」

「いいえ! 今の私には、これで丁度良いのです」

「…………」

台詞(せりふ)を取られたラファルドはセレナスを意味深に見遣り、そんな弟をクリスファルトが一抹の期待を込めた目でそっと窺う。

「この痛みが引くまでに、(きざ)まねばならない教えですもの」

「…………」

ラファルドに何時(いつ)にない、穏やかな笑みが浮かんだ。

「これからの殿下次第であられる、ということですね」

据えた甲斐が在りました、と続くはずだったのだが。

「……まったく(可愛くない! セレンちゃんは目に入れても痛くないほど可愛いというのに)!!

国王が流れをぶった切ってしまう。

軟膏(なんこう)でも塗って、湿布張っとけば? って話だろうによ……!)

「――――」

退屈そうに欠伸を噛み殺すグラディルを、国王は退屈そうに一瞥した。

(限りなく0点――そんな感じかな。現状、殿下相手じゃ色恋云々にはならないだろうけどねえ……。でも、ラディにそんな色眼鏡を向けて来ると言うことは――処刑で決定かな? 兄さん)

ラファルドが胸中で評した直後、グラディルは近くに居た騎士と近衛騎士の混成軍団から制裁を食らった。
一見、欠伸を噛み殺す不謹慎に対する突っ込みだが、生意気((うらや)ましい)にも程が在る!! ということだろう。
国王――主君、が気に掛ける相手なのだから。
おまけに、どうしてか、セレナスの(ひたい)にも青筋が浮かんでいた。

(えーと……? ……羨ましがるようなものなんて、あったかな……?)

グラディルへの当たりのきつさに関するヒントがあると直感したが――玉座で拗ねている父の悪友への対処を優先することにした。

「……仕方ありません。陛下のご心痛を和らげさせて頂くとしましょうか」

「……え? 今、この場で――?」

「いずれ、また下町見学をされる時に痕が残っている訳にはいきませんから」

「――――!!

近衛騎士団長を初めとする騎士たちの顔が一瞬で無表情になる。
国王も一目置く神祇(じんぎ)の血族の発言では、予告(しかも、期日未定)と変わらない。
脱走容認発言か!? という疑惑と今度こそ(陰ながらの警護という形で)同道する!! という決意が混ざっていた。

「何故、そうなる!!

自分の心痛を和らげることが、どうして娘の未来の脱走予告になるのか?! と言わんばかりに国王は無表情だ。
誤解を正しておけ、という突っ込みだとどれだけの人間が気づいただろう。
ラファルドに浮かんだ微笑は何処までも謎めいていた。

「市場でならず者に付き(まと)われたのは、殿下の偽者。そうでなければいけませんので」

今日の騒動は、極力穏便に(・・・・・)処理される。
もしまた、が在ったとしても、問題など発生しないように。
けれど、聖堂は崩落してしまった。その事実は隠せない。
いや、隠さない。
だから、第三王女のそっくりさんといえど(・・・・・・・・・・・・・・・)、顔に傷や痕が在ってはならないのだ。
王族の警護はぼろい、などと看做(みな)されては騎士団の面子(めんつ)に関わる。
加えて、王族であることの権威が薄れれば、政治的な治安までもが低下する。
玉座に座る資格が有る者を駒と看做す権力の椅子取りゲームの口火が切って落とされるからだ。
魔物の蠢動(しゅんどう)が活発化している状況で、人命の尊厳すらも時に容易く冒涜(ぼうとく)する遊戯が蔓延(はびこ)れば――国家存亡の危機、と呼べる状況が目前になる。
王族の長たる国王にとって、それは許されていい事態でも、看過されていい状況でもない。

「…………」

国王は退屈そうに、騎士達は観念するようにため息をつく。
第三王女殿下の脱走は無かったこととして処理される、のは仕方がない。
それが建前であり。しかし。
今日の労働は特別な報酬として、給料とは一緒にしないで貰いたい。
本音だった。
けれど、騒動が起きたのは王女が脱走したから――ではなく、聖堂が崩落したから――になる。
つまり、特別報酬は不意になる。通常の勤怠の範疇に収められてしまうのだから。
そんな、殺生な!! という抗議が出来ないことはない。
騎士の美徳、というものに媚薬を嗅がせることが出来たなら。
主君――国王が、転職を考えることが常識なほどの昏君だったなら。
悲しいかな、どちらも絶望的。それが現実だった。
例外を許すものが在るとしたら――それは、国王の胸先三寸。
つまるところ、俸給を巡る雇用者と被雇用者の、実にありふれた駆け引き。
それが待っている、ということなのだ。
特別報酬を手にする為に、どんな代償を迫られることになるのか――。
そこに頭を痛めるのは、上位の騎士である。
陛下にゃ得手でも、俺らにゃ不得手。特別報酬、諦めた方が早いな――。
現実の世知辛さに涙を呑む覚悟を決めるのが、下位の騎士だった。

(……馬鹿臭え落ちだこと)

政治にはそんなに興味がないグラディルは腹いせの色を帯び始めた制裁に反撃を始める。

「よろしいでしょうか?」

グラディルと騎士達双方に不可視の力で灸を据えたラファルドに、セレナスは頷いた。

「お父様の心痛は、取り除いておくに越したことが在りませんから」

「では、失礼を致します」

ラファルドの手が王女の頬に当てられる。

「…………」

肉親以外の男性の手が頬に在るというのは、セレナスには滅多にない経験で、少しばかり気恥ずかしかった。
だからこそ、自然と照れてしまう。
ただ、そのはにかみは元より美少女の(たぐい)であり、人目を惹く力を持つセレナスのもの。
人の上に立つ経験を持つがゆえに多少の年の差はものともしないラファルドも、年の近い異性に対しては経験が浅く、つい、見惚(みと)れてしまった。

「…………」

見惚れを意識したセレナスが恥じらいを深めることで、華やかさが一層鮮やかになる。

!!

角度次第では極めて親密そうにも見える現場を目撃させられた父親の顔が怒りに染まり、歯軋りが始まった。

「…………」

ラファルドが我に返ると、治療は一瞬で終わってしまう。

「もう、大丈夫ですよ」

「有難う御座いました」

治療への一礼は、真摯(しんし)ゆえに優美だった。

「……いえ、それほどのことでは」

警護の近衛すら()いて、脱走するような気性である。国王の鬱屈(うっくつ)を理解できず、浅はかに見倣(みなら)ったはずだ、とラファルドは考えていた。
それが、見損なっていたと思い知らされるには十分な意外性の連続である。
だから。
束の間とはいえ、ラファルドは滅多に無い反応を見せた。

「…………」

初めて出会ったように、ただ真っ()ぐに、見つめたのである。

「――――!!

国王が不機嫌に床を踏み鳴らして、万座の注意を()いた。

「可愛げが無いばかりか、油断も(すき)も無いとは、腹立たしさが余りある――!!

あっという間に普段通りの、読めない顔を取り戻した弟に、クリスファルトもこの時ばかりは、大人気の無い真似(まね)をしてくれるな! と、国王を(なじ)りたかった。

「では、(おとり)任務はもう、」

「続・行・だ!!! に、決まっておろう!!

ラファルドの台詞をぶった切り、()き出しの牙で迫る獣のように国王が凄む。

「第三王女の頬を張るという()作法……その対価は、父親である余が!! 取り立てる! 良いな!?

「…………」

私情丸出しの宣言にラファルドは抗弁の意気を()がれ、グラディルはとんでもないアルバイトが当分終わらないだろうことを悟った。

「……お父様……!」

そして、父の意固地に娘は呆れ。

(ぎょ)意」

臣下だけが(うやうや)しく一礼を(ささ)げたのである。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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