第74話◆名残の雲~後の嵐

文字数 5,146文字

(まった)く……! 仕事をしに来たのか、(いこ)いの(じゃ)魔になりに来たのか……!」

宰相(さいしょう)が消えた方向を、国王は何時(いつ)までも(にら)んでいた。

「実は、仲間に入りたかった、とか……?」

グラディルが出来る(かぎ)り良心的に解(しゃく)して、さりげなく国王をからかう。

「無い! それだけは、無いっ!!

「…………」

(じょう)にもバッサリと(だん)言した国王も、すぐに、諫めて(のって)来ないラファルドに気付いた。

「……、応(えん)要請(ようせい)を考えるか?」

(ひと)(ごと)めかせて国王が水を向ければ、ラファルドは(こぶし)(にぎ)()め、(しん)呼吸(こきゅう)をする。

(やかた)は、(しぶ)い顔をするでしょうね……」

(しき)依頼(いらい)ならば、(ことわ)らない。(さい)終的には。

けれど、館は()能の損失(そんしつ)(おそ)れ、(いと)う方向に(かたむ)いており、今夜の一部始(じゅう)報告(ほうこく)されれば、もっと意()地になる。
動かすには、勅令(ちょくれい)が在っても頭と()(いた)くなる、辛抱(しんぼう)強い交渉(こうしょう)(ひつ)要になるはずだ、と、ラファルドは予感(よかん)していた。

「…………」

ラファルドに()かんだ自(ぎゃく)的な()みに、グラディルは目を()らしつつも、(いら)()っていた。

「そうか……。全く! (むかし)のお前の可愛(かわい)()の無さが(なつ)かしくなる日が来ようとはな」

「――陛下?!

()の無い小父(おじ)懐古(かいこ)に、ラファルドは(あわ)てふためく。
昔の自分を、()ずかしいと考えているのが一つ。

そして。

「……へええ。昔から可愛気が()りなかったんだ、お前」

知られたくない事に(つな)がりかねないから、が一つ。
今も、グラディルの(のん)気な合いの手に、(けん)呑な何かが(ふく)まれている気がして仕方が無かった。

「ど、どうでもいいよね! そんなこと!!

「昔のお前は、今のお前よりも可愛気も(すき)も無かった、ってことだろ?」

グラディルがからかう気満々なのは、(だれ)が見ても(わか)る。
国王でさえ、日(じょう)的に構築(こうちく)してきた力関係に悪影響(えいきょう)(およ)ぼすのが(こわ)いのだろう、くらいにしか考えなかった。

「まあなあ……。ディム、……先代当主、が6(さい)餓鬼(がき)を相手に、(しつけ)を間(ちが)えた――!! と本気で反(せい)する(ほど)だったしなあ……!」

「………。たった六歳で……、……それは……」

「悪かったね!! 『人として問(だい)がありそう』で!! でも、あれは本っ当にどうしようもないお馬鹿さんが相手だったから――!!

年相応の少年のようにむきなるラファルドは、誰が見ても目を丸くするほど(めずら)しい(しろ)物だった。
当のラファルドにも、自(かく)が在る。

「……それでも、先代をして強(てき)(みと)めさせた相手だったろうに……」

(なご)やかな空気を()き立てる国王の表情が(かす)かに、しかし、深(こく)(かげ)った。

「それが、年々(おとろ)えているとなると――」

最悪だ!! と、ラファルドが青ざめるのと、

「――ファル!!!」

近くを通りすがった人々にまで耳を(ふさ)がせたグラディルの怒号(どごう)は、同時だった。


「――?!

国王が(おどろ)いてグラディルを見つめる。

手前(てめえ)(おれ)に何つったよ!?

()()くすような目で、グラディルはラファルドを見つめる。

「(言える(わけ)、無い。こうなるだけでも頭が痛いのに――)『何ともない、問題無い』」

ラファルドは目を合わせることが出来なかった。

「――だよなあっ!!?

()が目を丸くした、(しゅん)()動さながらの(はや)さで(つか)みかかり、グラディルはラファルドを(はげ)しく()さぶる。

()げられない。それだけは、ラファルドも解っていた。

「……言ったはずだよ!! 『後(かい)もしてない』って!!

グラディル目が(いか)りを(あらわ)すように激しく(かがや)く。

「だったら!!!」

「――っ!!

(なぐ)られて、ラファルドは(かべ)(たた)きつけられた。


「……!?

集まり始める(しゅう)目に、国王が手(ぢか)な騎士と(えい)兵に不(かい)入を命じる。


(しっ)神せずに()んだのは上出来――いや、力(まか)せに見えても加(げん)(わす)れずにいてくれたからか。

「どうして! 俺に(うそ)をついた?!!」

空気を(ふる)わせるほどの(さけ)び声の直(げき)は、耳に痛いどころではない。

ラファルドは壁を(ささ)えにしてでも、体(せい)を無理矢理に()持した。

「嘘はついてないっ!!

抗弁(こうべん)してみても何処(どこ)か後ろめたいのは、()直に()げられなかったからだ。

グラディルは容赦(ようしゃ)をしなかった。

「じゃあ、(かく)(ごと)!! ……でもよ。同じだよな? 嘘をついたのと大差がねえよな!?

ずんずんと歩み()り、(さい)度、首根(くびね)っこを掴んで引き寄せた。

「――俺の目を見ろ!!

()りがするほどの怒声では、目を開けることすらも困難(こんなん)である。

それでも、見つめ返すことが出来たのは――こんな状況(じょうきょう)(まね)いた(せき)任感(ゆえ)、だろうか。

「……言えれば、良かった――とは、思わない。あの頃の君は、今の君よりも繊細(せんさい)な所が在って、今だってそうだけど、今よりも背負(しょ)いこみたがりだった。……忘れたなんて、言わさない」

「…………!」

初めて、グラディルの(いきお)いが(つまず)いた。

「責任感が強い――そんな言葉では誤魔化(ごまか)せなかったよ。主治()としてね。〈力〉の在り(よう)(せい)神の在り様。ラディ、君の責任感は自()嫌悪(けんお)()中合わせだった。自己嫌悪に(あお)られる〈力〉は心身を容易(ようい)(むしば)む。(ぼく)は、それをこそ、絶対(ぜったい)()けるべきだと考えて、(はん)断した。だから――、言えなかった」

ラファルドは乱暴(らんぼう)に解放された。
壁に叩きつけられたのと同義だったが。

「……結局(けっきょく)、俺のせいかよ……!!

(ああ! もう!! 言ってる(そば)から――!!!)

(したた)かに身体(からだ)を打った眩暈(めまい)(おそ)われるラファルドは、いっそ、このまま気絶したかった。
けれど、そんな場合じゃない。気絶なんて、後でいくらでも出来る! 今は――。

「…………違う!! 違うからね!! 人からかけ(はな)れていく〈力〉を持って(なお)、人で在る。その為に必要な――」

「うるせえっ!!!」

()儀礼(ぎれい)と伝えたかったラファルドを、グラディルは()退()ける。
その目から(なみだ)(こぼ)れた。感情が(ばく)発する、前(ちょう)だ。

「グラディル!!

「うるせええっ!! ――殴る!! ()ってきたら、ぶん殴るからなっ!!!」

()っ――」

涙を乱暴に()き取り、()ばしたラファルドの手を(たた)(はら)って、ありったけの感情を目に()めて、グラディルは睨んで来る。

「…………」

背を向けられても、ラファルドは追い()けることが出来なかった。

そして、グラディルは大広間の満場の視線(しせん)(ごう)引に()っ切って、姿(すがた)を消した。


「……ルヴァル……」

(めっ)多に使わない()びかけは、国王の茫然(ぼうぜん)の度合いの強さの裏返し。
きっと、初めて目の当たりにする感情の爆発だったのだろう。
多少、(はた)迷惑(めいわく)でも、仲(むつ)まじい小父と(おい)っ子の関係が在った気がして、ラファルドは微笑(びしょう)を返せた。

()心配をお()けしました。大丈夫ですよ、今日は全然マシな方ですから。感情は()れていても、〈力〉はちっとも暴走していませんでしたしね」

国王ガルナード=アストアルは、父ディムガルダの(えん)ではあるが、(おさな)い頃からの知()であり、信用できる数少ない大人の一人だ。
ちょくちょく意地を()って、大人気(おとなげ)ない喧嘩(けんか)()り返すのも、二人には挨拶(あいさつ)であり、貴重(きちょう)息抜(いきぬ)きの一つだったりする。

「……そうか? (ずい)分、付き合いが深いようだが?」

「あれ? 聞いてませんでした?」

ラファルドも話したことはないが、グラディルはあの性(かく)で、当時は今よりもお貴族様を(・・・・・)はっきり(きら)っていた。
愚痴る《ぐち》ぐらいはしているものと思っていたラファルドである。

ガルナードは(かる)く顔を(しか)めた。

「……父親じゃないんだぞ。子供の付き合いに大人が口を(はさ)んでどうする!」

「喧嘩をよくしましたし……、愚痴られるぐらいは、と。結(こう)(たよ)りない小父さんだったんですね?」

ラファルドのからかいに、ガルナードは笑顔に青(すじ)をつけて応対する。

「馬鹿者! クレムディルという、あれに()を掛けて歳を食っただけの、特大の(くそ)餓鬼(がき)が居ったからに決まっておろうが!!

ラファルドは意外な気がして、目を(またた)かせた。

「……そんなに(すご)い人……、でしたっけ? ()()用な人、という印象(いんしょう)はあるんですけれど」

ラファルドの記(おく)に在るクレムディルは、(だま)っていても荒々(あらあら)しさを(かも)し出す居()まいと、自分を知るが故に、一(そう)無器用になって、寡黙(かもく)(えら)ぶ、男(くさ)い言動の持ち主だった。

グラディルの知るクレムディルと食い違うのは仕方がないとしても、国王の知るそれとも(こと)なるらしいのは、少しばかり意外だったのである。

「おう! ディムと二人がかりで躾けた――いや、あれは奥方(おくがた)殿(どの)(とど)めを()して(もら)って、どうにか形になった――だけ、……か? いや! そんなことより!!

何処か懐かしく語っておきながら、様にならないと気づいて、慌ててガルナードは(だっ)線を正す。

ラファルドは久しぶりに、他意無く(わら)った。

「見えるようですね。僕の方は……どちらも、5歳の時ですね。館に(まよ)()んできたのがラディで、クレムさんは、すっかり()付いたラディを引き取りに」

「……クレムはともかく、よく迷い込めたな?」

当時、(すで)に弟子入りしていたクレムディルは、国王を通して、ラファルドの父ディムガルダとも面(しき)を持ち、交友を作っていた。
その数年後、ディムガルダは()伝の異能を失い、クレムディルは勇者を真剣(しんけん)(こころざ)すようになる。

「ですよねえ。館の警護(けいご)には、(うで)が立つだけでなく、目(はし)()く人間を使いますし。……ああ、見(のが)されたのかな? クレムさんの(けつ)縁、ということで。(ちょう)度、祭りの日でしたからね」

ラファルドは()えて、詳細(しょうさい)は語らなかった。
大事な思い出である。

「僕は僕で調子に乗って、祝福(しゅくふく)……の真似(まね)(ごと)、ですかね、をしてみたんですけど」

「――お前! 何故(なぜ)、それを黙って」

目を丸くして驚く小父に、ラファルドは可愛気の無い笑顔を向けた。

「子供――幼子(おさなご)のやることですよ? (だい)の大人が()()けても仕方がないでしょう?」

幼子のやる事だとしても、洒落(しゃれ)にならないことがままあるのが神祇(じんぎ)、の血族だったりするのだが。
語りたくないという甥っ子の素直じゃない心情を、小父は素直に()んでやることにした。

話の(なが)れを実()に切り()える。

「……まさかとは思うが、異能が衰えているのは――?」

国王の顔に(もど)った小父に、ラファルドはため息を返した。

「……、()定は……出来ない、ですかね。ただ、父の時とはアプローチが違いますし、手(ごた)えも、聞いた話とは違っていて――。何とも言い(がた)いのが、正直なところです」

「どうなる?」

()な顔の国王に、ラファルドも(あそ)びの無い顔で対した。

「どうとでも。最悪、()くしたとしても――問題は出ません(・・・・・・・)。そのことは陛下の方が()存知(ぞんじ)であられるはず」

神祇――神通と呼ばれる異能を(ふる)う故に、一定の役目を(にな)う人間、の数は決して多くない。
けれど、ガルナード=アストアルの代に限って言えば、(めぐ)まれていた。
ラファルドが(がけ)から飛び()りる覚()館出(やかたで)をしても、大した変化を見せなかった程度には。

(たわ)け! 誰が(かず)を問題にしたか!! トラスの命(うん)()、貴様の(かた)に掛かっているだろう!!

最悪の(そう)定は、〈力〉を(ぎょ)す目()が立たないまま、ラファルドの異能が(かん)全に消失してしまうこと、である。
〈力〉の鍛練(たんれん)は、ラファルドが()目になったから(べつ)師匠(ししょう)(あて)がう、という真似が(むずか)しい。
()()なまま放り出される結()になったなら、誰にとっても後味の悪い結(まつ)にしかならない。
最悪の想定に対する責任は、ラファルドの義務だった。

だから、見せない。
可愛くない言動を素直に(しか)ってくれた感(しゃ)は。

「間に合います」

「――――」

ラファルド国王は真っ(こう)から視線を(たたか)わせ合う。

「…………」

数秒(すうびょう)後、ため息と共に視線を逸らしたのは、国王だった。
素直に言うわけには行かないが、済まなく思ったラファルドである。

「……(げん)状、悪(しゅう)(ただよ)()大ゴミレベルですけれどね」

「――あれで(・・・)、か?」

直前の戦闘(せんとう)でのグラディルを(おぼ)えている国王が目を丸くする。
公国最強を自()する自分でも再現は不可能。そんなレベルの技量(ぎりょう)が有って、悪臭漂う粗大ゴミならば――秀逸(しゅういつ)な性能の完(ぴん)に戻った(成長した)時にはどうなるというのだろう?

しかし、ラファルドは表情を(けわ)しくした。

「あれは、(ぐう)然の(さん)物です。(うれ)しくはあっても、()められた結果じゃありません。おまけに、調子に乗って、勇者試験受験(ぼうそう)した挙句(あげく)、あの(てい)たらく! ですしね。締める所を締めないと、リサイクルアイテムレベルにも(いた)れるかどうか――!! ですので、小父上(・・・)?」

ラファルドの、おどろおどろしくも(あや)しい(雰囲気(ふんいき)だけはキレた時のディムガルダそっくりな)表情に、不覚にも、国王は()まれてしまう。

「はいっ!!

「どうぞ、有意義な(きょう)力を。――よろしいですね?」

「――、!! ……」

本能的に返事をしかけて(われ)に返り、どうにか、思い(とど)まる。

気づけば、ラファルドのお()儀が目の前に在った。

「後を追います。……K.O.されるだけで済めばいいですけど」

「――――」

引き止めそびれた国王に出来たのは、ため息をつくことだけだった。

「……背負いこみたがる? ヴァル、お前の方こそ(かがみ)を見るべきだろうにな……。どうして、ああまで父親に似てくれたんだか……」

振り返りもしない後ろ姿を追う公国の(あるじ)(ばく)然とした寂寥(せきりょう)を味わっていた。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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