第11話◆反省・・・改

文字数 5,720文字

「……まったくもう! お父様の悪ふざけにも困ったものです!! そして、気晴らしにはやっぱり、脱走(これ)が一番ですわね! さて。今日はどちらへ向かうとしましょうか♪」

首尾よく城下に紛れ込めたセレナスの歩みは軽かった。
髪型を変えて服装を市民のありきたりと大差無いものにしてしまえば、意外なくらい王女とは気づかれない。
何をするにも作法と仕来(しきた)りで雁字搦(がんじがら)めになる王宮。それが味気なく思えるほど市井の人々の表情は豊かで、溌溂(はつらつ)としていた。

「♪」

解放された晴れやかさを存分に味わいながら、(にぎ)わう朝の市場を目指す。
何気(なにげ)ない顔で門衛が(にら)みを利かせる市場の大門をくぐり、噴水が涼風を振りまく広場に立った。此処(ここ)からの(なが)めは、セレナスのお気に入りの一つだ。
市場は魅惑に(あふ)れた世界だった。
どっしり居を構えた店がある。
格式や伝統を看板にした風格に満ちた(もの)もあれば、真新しさと勢いに()けている店もある。
かと思えば、市場が用意した出店(しゅってん)スペースに商品を山()みにしているだけの、構えを持たない出店(でみせ)がある。
仲買や問屋を介さずに、王都で直接商売したい商人が好むのだとか。
商売なのに自由に市場を移動できる屋台という物もひしめいていた。
こちらは(あきな)う品の種類によらず、お手軽さを売りにしていることが多いようだ。
飲料や軽食、菓子を主流に、生花や高価過ぎない装飾を扱う店も人気がある。
一番記憶に残っているのは、くじを引かせて当たりと外れを決め、それに応じた景品を(もら)える、商売か娯楽か判らないもの。
()にも角にも店が雑多に、商品共々所(せま)しとばかりに並ぶ様は壮観だ。

専門店――一つの分野を制覇している店からたった一種類の商材に特化した店までと(はば)がある! が在れば、幅広く分野と種類を網羅した何でも屋(?)っぽい店も在る。
しかも、同種の店が五、六(けん)(かぶ)って存在しても問題にならない! とか。
選ぶ楽しみというものらしいが、初めて知った時には、こんなに同じ店ばかりあってどうするんだ!? と首を(かし)げたものだった。
買えない物が無いほど多彩な品を(あつか)うという評判も、あながち嘘だとは思えない。
加えて、圧巻なのは店や、そこに並ぶ商品の種類と数だけではない。
それらを軽く上回る数――いや、これはもう「量」で測った方がいいかもしれない程、の人が街路中をごった返している。
そして、誰かしらが店の前で足を止めて、商品を値踏みしていた。
真剣に商品に見入っている顔が在れば、冷やかしだと解る興味の無さもあり、目当ての品に興奮している顔、(だま)されないとばかりに厳しい顔、何か困る事があったのか、泣き出しそうな顔まで。とにかく豊かで、眺めているだけでも、何時(いつ)までも飽きない。
活気に満ちた空間が好きなのだ――そう気づかされたのは何度目の時だっただろう?

一方で、何もかもが違い過ぎることに複雑なものを覚えるようにもなった。
厳格な形式と作法で、息抜き一つにも苦労させられる宮城。
城下を知る前までは疑問すら感じたことの無かった日常が、ただ豪華絢爛(けんらん)なだけの(おり)に思えて来る。

(だからお父様も、どれだけ厳しく(いさ)められようとも、隠れて城下を歩き回ることをお止めにならないのでしょうね――。いけない。往来の中なのに、足が止まる所だった!)

感傷的な気分のせいだろう。冷やかすつもりさえない店の前で立ち止まりかけていた。
客ではなくなったと気づいて、残念そうな気配を(よぎ)らせる店主に笑顔で()びる。
相応に通い()れなければ歩くのにも苦労する人の洪水をするすると進んでいくセレナス。
すれ違う人々が振り返るのは何かに()かれたのか、悪目立ちでもしているからか。
半人前に扱われている気がして、セレナスは悔しかった。

(……むう。この市場も片手で数えられる以上には通っています。お(のぼ)りさん、ですっけ? は、卒業できたと思うのですけれど……。もっと、頻繁(ひんぱん)に来た方がいいのかしら?)

騎士団が滂沱(ぼうだ)の涙を流しそうなことを思う。

(でも、あまりにも頻繁だと――先回りされますわよね。最悪、折角(せっかく)確保できた拠点……隠れ家、でしたっけ? が無駄になってしまう。それは、困りますわ!)

多少の土地(かん)は出来上がっているし、隠れ家以外にも、隠れ潜むのに都合(つごう)がいい場所を幾つか見つけてある。
万が一追っ手を掛けられたとしても、簡単には捕まらない自信があった。

「――おはようさん! いい朝だね!」

そんなこんなを考えていたセレナスに声を掛けたのは、顔馴染(なじ)みになってまだ間もない青果店の女将(おかみ)だ。

「おはようございます!」

元気な挨拶(あいさつ)と笑顔を返すと、赤く丸い果物を一つ、放って来た。

「ありがとうございます!」

世間話も十二分に楽しいが――受け止めた果物が決め手だった。
こんな時の為にちょろまかしておいた小遣(こづか)いを使って、市場で食事をしよう!
立ち食いも楽しいだろうけれど、今日はちょっと贅沢(ぜいたく)をして――市場の(はず)れに在る、市場全体を見渡せるという古い教会の鐘楼(しょうろう)で風に吹かれながら。
考えるだけで楽しい。
そうと決まったら、即決行だ! 携帯食を選ぶだけでも色々目移りするだろうし、最近、少しばかり脱走の頻度(ひんど)が高いせいか、王宮も神経を(とが)らせているという。騎士団に追いつかれる前に味わい終えてしまわねばならない。
女将にはそのまま手を振って、足を速めた。



「……へえ……。(たし)かに、上玉だと解りやすがね……」

感心しているようで、感情に欠ける陰鬱(いんうつ)な声。
その(あるじ)は市場の一角を見下ろせる隠れ家で、窓の下の景色を無表情に眺めていた。
手下共の報告に間違いが無ければ、獲物にはまだ気づかれていない。
下手(へた)をしたら、(ねら)われている可能性にさえ勘づいていないだろう。警護のけの字すら無いとは、あまりにも無防備過ぎる。
何故(なぜ)見初(みそ)められないと思うのか。ただでさえ、美しい顔や髪は目立つというのに。
しかも、獲物のそれは”(かがや)かんばかり”という形容詞が付く。
化粧だけなら庶民もするが、「(みが)き抜かれた」と表現可能な上質さとは無縁。高嶺(たかね)の花だ。
商売女が清純さに焦がれ、気取るのは世間知らずの間だけで、お貴族様には嫌味の無い生まれと育ちの良さが無いと来る。
あれはとびきりの――上物だ。
大金を積んだところで手に入らない、掛け値なしの上質――そんなものを無頓着にひけらかせるのは、紛れもない世間知らずの証だった。

手筈(てはず)は?」

後ろ暗い場所に居るとは思えないほど変哲の無い声が男の耳朶(じだ)を打つ。
市場の見取り図を広げた古びた木のテーブルを囲む椅子(いす)の一つに、腕を組んで目を閉じた男が居た。
窓から見下ろすのを止めて、卑屈さと素っ気無さを両立させる。

「整っておりやすよ」

余所(よそ)者なのに、態度がでかい。それが、男――依頼人、への評価だった。
正直な所、うんざりしている。仕事と割り切っていなかったら、容赦(ようしゃ)無く痛い目に()わせてやりたかった。

「”目”が張り付いてますんで、見失うことはございやせん。何処で仕掛けます?」

「そうだな……」

仕事を請け負ったくせに、依頼人が気に入らないのは――。
一つは、男が自分達を丸っきり信用していないこと。
一つは、男が自分達を丸っきり見下していること。
そして、最後の一つは男が仮面で顔を隠していること、だった。
鼻から上を隠す仮面の下で、男は陰鬱に笑った。

「此処だ!」

「――――」

依頼人が指さした場所に、愛想(あいそ)を尽かしたくなった。
余所者さ加減にも程が在る!
外面(そとづら)はともかく、内心では思いっきり渋面を作った。

裏稼業には裏稼業の仁義が存在する。
接点が無い、はずの表社会とでさえ暗黙の了解が無数に存在し、驚くほど厳密に守られているのだ。
依頼人はそれに関心が無さ過ぎた。
余所者ほど、細心の気配りで慎重に徹さないと、命すら簡単に危うくなるというのに。
指し示された場所を舞台にすることは、表社会と裏社会の間に存在する暗黙の了解――「(おきて)」、を(けが)すことに他ならなかった。
言い訳出来ないことは無い――だろうが、相当の罰を覚悟する必要が在るかも知れない。
仕事を蹴るという選択肢もあるが、問題はこの手の客にありがちな傾向。
一つは、世間知らずが形を成しただけの(くず)
これならば問題は何も無い。見切り時が来たら、掟に従ってさよなら――で済む。
厄介なのはもう一つのほう。
矜持(きょうじ)の根源が実力に根差している手合いである。
大抵の場合、腕っ節が滅法強い。
無頼と一まとめにされる裏社会の下っ端たち――男達の正体、が何百、何千、何万居ても勝負にならないことがある。
おまけに、裏街道を渡り歩いてきた男の勘が告げていた。
この依頼人は隠し事をしている。けれど、それを(あば)いてはならない――と。
仕事を請け負った以上、逃げられない(依頼人に始末されて終わる)以上、首尾よく(まっと)うするしかない。

しかし。

(請けるんじゃなかった――。こら、相当きついヤマだぜ……!)

後悔しないわけにもいかなかった。
奇跡的なくらい仕事が上手(うま)く片付いたとしても――多分、この国には残れない。
何故なら、過ぎるくらい上質な獲物の正体、それが問題だ。
見当が間違っていなければ、余所者に好き勝手をさせない、その程度の意地で(から)んでいい相手ではなかった。
悪戯(いたずら)に手を出せば、破滅する。そういう代物なのだ。

怖気(おじけ)づいたなら、止めてもいいが?」

依頼人に感情の見えない目で見つめられていた。

(畜生――!)

「……んなわけねえでしょうが! あんまり、俺らのこと()めてっと――」

「……解ったから、そんなに怖い顔はしないでくれないか?」

依頼人はため息をついて、降参のポーズをする。

(……舐め(くさ)りやがって――!! ……けど、目がねえってこともねえ。頼む! せめて、玉だけは拾わせてくれよ……!!

口腔(こうこう)で広がる苦い(つば)誤魔化(ごまか)す為に、景気づけのふりをして、親指の頭ほどの大きさの器の酒精を干した。


そして、男が手下を(ひき)いて姿を消すと――依頼人は意味深に笑った。



「……ったく!」

「じゃ、ないでしょ! もっと早く気づこうよ!!

渋面で腕を組むグラディルに見下ろされるラファルドは我慢を放棄して噛みついた。

王宮から城下まで、疾走(しっそう)一直線。
ずっと首を()めつけられていたラファルドは気絶してしまっていた。
王女の行方(ゆくえ)に関する手掛かりが無いとグラディルが気が付くまで放置され、今しがた、やっと喝を入れてもらえたのである。

「んなこと言われたってよ……! 善は急げ! だろ?」

「……それで? 殿下の行方は?」

急げが善! に置き換わっていると突っ込みたかったが、我慢する。
現在地はとある建物の影。
その裏手は宮城の敷地と城下を区切る(だい)城門を起点に、王都を真っすぐ走る大通りだ。馬車で10分も走れば、王宮御用達を初めとする高級商店や騎士団、官庁の出張所が集まる一番街に到達する。

「ん? 何で?」

決定的ではなくても多少の手掛かりの持っている、と思って呼吸を整えながら()いたのに――まさかの?マークが返ってきてしまった。

「…………何、それ。ねえ、まさか! 何も聞いて来てないの――?!

「それ、お前の役目だろ。俺、見つけただけだし」

正確にはグラディルの無自覚な言動が原因で発覚した、である。

「それに、脱走だろ? 普通、手掛かりなんて残さねえよ!」

そんなこと威張らないで! という突っ込みは呑み込んだ。

「それでも! 経験からくる見当とか、必要な情報は提供して貰わないと! 第三王女殿下には脱走癖が有るらしい、って、笑えない笑い話を仕込んで来たのは君だったじゃないか!!

「え? あ――、それは教官からまた聞きしただけだから!」

正確には②。
息抜きに、夜、学生寮を抜け出し、帰寮の門前で待ち構えていた教官達の怒鳴り文句に紛れ込んでいた、である。

「ほら、さっさとしろよ。何かが起きてからじゃ遅いだろうが! それに、見られたくないんだろ?」

促されるのは状況的に仕方がないが、反省のはの字も無いのが腹立たしい。

「そうだけど……。でもね、〈探知〉にしても! 具体的な心当たりが必要なの!!

「んなこと言っても、そんなの軽くぶっちぎってるのがお前だろ! ほら、ほら!! さっさとしねえと、説教かます時間が無くなる! 騎士団には通報済みなんだぞ!!

王族に関することは近衛騎士団の管轄(かんかつ)だが、近衛が動くと逆に重大事が発生したと強く広報してしまうことになる。()えて騎士団を動かすのが公国の危機管理術の一つだ。
……もっとも、ラファルドの勘気を(なだ)めるのには何の効果も無いのだが。

「……ラディ、君ねえ――」

そこへ。
突然、〈転送〉の魔法陣が展開される。

「急げ! これ以上、殿下を見失う訳にはいかないぞ!!

魔法陣から現れた精悍(せいかん)な男達の一団が、身なりを整えながら目の前を駆け抜けていった。

「あれって――」

変装の中途だとは察しがついた。
市民の普段着っぽい服装で(おお)い隠されようとしていた所属を表す紋章をグラディルが動体視力でチェックし、一団の行く手を術で俯瞰(ふかん)しつつラファルドが画像化し、検索を掛ける。

「所属は? 座学で習う範囲に無い?」

「……判んね。初見。でも、向かい合う一対の一角獣(ユニコーン)を剣と槍が囲ってた!」

「だったら、騎士団だ。陰ながらの護衛を(たまわ)った――って、ことでしょう」

「近衛の出番は?」

ラファルドの口調は何処か白けていた。

「察しがつかない? 君のお師匠さん、なんでしょう?」

「そりゃ――ああ! 二次被害が(こわ)い、かあ……。まあ、そっちの方が洒落(しゃれ)にならんわな」

「前科があったせいも有ると思うけどね」

王女捜索(そうさく)に人手を()いている内に国王に脱走された――という、第三王女と国王が如実に似た者親子だと示す事件が、かつて、在った。

「でもよ。つーことは――?」

グラディルがにやり、と笑う。
公国の軍事力には魔法を専門にする集団――魔法師団、も存在する。
先程の光景は魔法探知でセレナス王女の所在を(つか)み、転送陣で護衛部隊を送り込んだ、ということだろう。
王族相手に瑕疵(かし)は許されない。
つまり、今しがたの一団を追跡すれば、自動的に一番有力な王女の現在地に導かれるのである。
魔法で身体能力を強化しただろう一団は最早、影も形もないが――ラファルドの”目”はその程度の「速さ」で見失うことはない。

「――――だろうね……」

させたい反省が不意になったラファルドは、頭が痛いことを露骨なくらいの表情で語った。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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