第13話◆好事、魔多し(2)・・・改
文字数 3,056文字
必死に
苦しがって胸を掻き
「無理に
慎重に衣服を
土に染み込む水のように〈力〉が広がると、脳裏に様々な情報が画像として集まって来る。
(これ――、もう結構怖い状況かも。でも……今なら、まだ!)
同時に、不可視の力でマグスの上半身を抱え起こしていく。
「ごほっ、ごほっ、――ぅう、ううぅ――はあ、……ごほっ」
例えるならば内視鏡で覗き込むような、画像が次々に脳裏に送り込まれてくる。
これがセルゲート家の術者が行う「診察」だった。
ラファルドは眉を
(……あれ? どうして、何ともない感じなの?! でも、発作は現実――じゃあ、病気とか怪我の
画像をより鮮明にする為に、患部だと思っていた所に意識を傾ける。
ふと、
「……君、も……後、を――追って、くれ――だい、じょうぶ――だ、か――ら……」
(そんなわけないでしょう!
「診察」を切り上げてマグスをその場に寝かせ直し、「治療」の為の詠唱を始める。
不意に。
マグスの
「――ぐっ、ぅ、ぅう――、がっ!! ……ぁぁ、あ、あ、あああ――!!」
見えない槍で刺し
かっ、と真ん丸に見開かれた目は世界の
「マグスさん! 大丈夫ですか!!? マグスさん!!!」
意識の有無を確認する為に、意識を呼び戻す為に、
ラファルドの手を掴み返してきた手は――
(こ、この人――! も、まさか――?!)
ラファルドは絶句して、息を
「この……、
ほぼ
「まったく。数という取り
30人近い
「……っ、……ちくしょぉぉおおおっ!!」
痛む心身を激情で
異様なほどギラついた眼をセレナスに向けた。
「馬鹿野郎っ!!
別の悪党が破れかぶれの仲間を
しかし、次の瞬間。
壁面の窓という窓が一斉に蹴り破られて、閉ざされていた扉さえ豪快に破壊して、騎士と
「そこまでだ!!」
「――なっ!?」
絶句したのは
そして。
(は、早過ぎませんか?! 乗り込んで来るの――!!)
救助される対象であるはずの、王女自身だった。
セレナスの(超個人的な)予定では、一人残らず
「殿下――!!」
騎士の一人が悲鳴じみた警告を発した。
一つは王族に
一つは。
「?!」
セレナスめがけて振り下ろされた
振り向くという
「どぉおっ、っせぇええええええいっ!!!」
空気を
セレナスは崩落する天井の中を
「そ、総員退避――っ!!」
悲鳴とも怒号ともつかない絶
一拍の間を置いて、聖堂が一瞬で豪快に崩壊した。
物理的に飛び出してきた騎士や衛士もいれば、魔法によって難を
皆
聖堂内部(崩落を
風によって視界が戻って来ると――
「あ、貴方ねえ――、こんな
セレナスは腹を立てて
騎士団乱入の数分前、グラディルの到着と同時に「好きに使え。ただし、絶対にこき使え」という勅令を
グラディルは勅命に基づいて
つまりは、タイミングを計った
魔法で聖堂の外から聖堂の中を監視していた魔法師団の術士の合図に応じて、グラディルが釣り鐘ごと天井を破壊したのだった。
ゆえに、損害は味方にも敵にも皆無である。
悲鳴が上がったのは、聖堂の破壊は保険として考案されていた戦術だからだった。
詳細な一部始終を知らされていた人員が聖堂突入部隊に
だが。
「馬鹿はこっちの
「――(今!? 目が、かがや)――っ、な、何ですって――?!」
逆上するセレナスを一顧だにしないグラディルは汗を滴らせていた。
「おい!!!」
「殿下、お早く!!」
グラディルの怒号に何を感じたのか、近衛騎士の一人がセレナスの腕を強引に引く。
けれど、セレナスはその手を乱暴に払ったのである。
「そんなことより、あの
「っ、馬鹿野郎っ!!!」
さらなる暴言を
『作戦により崩落した教会が、突如として爆発した――』
第三王女殿下襲撃事件始末書より、
「……行きなさい。本当に、大丈夫だから――」
しかし、患者の
(呼吸……良し。安定と呼べるレベル。脈拍――平準に回帰。意思――問題無いと言えるレベルに鮮明。――O.K! 小康状態に入った!!)
「有難う。私は、大丈夫だよ」
苦笑を浮かべて、
「その……、お泊りになっている場所とかは」
心配そうな顔のラファルドに、マグスは笑顔を返した。
「大丈夫だよ、
(目を離したくない! 叶うなら、監視付きの治療所に即行で放り込みたいけど――。口論して疲れさせるのも、良くないか……)
「……解りました。無理はなさらないで下さいね! 必ず、お伺いします!」
ラファルドとマグスは握手を交わした。
「気を付けて」
「はい。――あ、ラファルドです! 失礼しました。では」
一瞬で青く透き通った光に包まれると、ラファルドは