第22話◆開示・・・改

文字数 4,562文字

「お、(おとり)作戦――?!

驚き呆れるセレナスに、ぽかんと口を開けたグラディル。
そして、ラファルドは(うつむ)いたまま戦慄(わなな)いていた。


近衛(このえ)騎士団長の先導の元、宮城で最も豪華絢爛(けんらん)な広間――玉座が君臨する王の間、へ参上した王女一行と一握りの関係者。
(ぎょ)した国王の開口一番の台詞(せりふ)が、「囮作戦への専従、御苦労」なる()労だったのだ。

「ち――、――陛下! では、(わたくし)の行動を、最初から――?!

国王と正対する位置、公国の紋章が縫い取られた真紅の絨毯(じゅうたん)の上に、セレナスを先頭にしてラファルドとグラディルが左右に控え、さらに後ろにサマトを初めとする護衛を兼ねた騎士達が(ひざまず)いている。
一方、国王が堂々とふんぞり返る玉座。その脇にはクリスファルトと宰相(さいしょう)が控えていて、意味深な表情で沈黙を守っていた。

「うむ!」

胸を張る国王の居住まいは何処か鯱張(しゃちほこば)っているようにも見える。
功労者一行(近衛騎士団長を(のぞ)く)が何時までも愕然(がくぜん)としているので、玉座から見下ろされる壁際に控えていた文武の官僚が口々に口を開いた。

慧眼(けいがん)にして御賢察、まことに(おそ)れ多く――」

セレナスはすっくと立ちあがると、傍付きの一人を(にら)みつける。

「……ラファルド? 貴方(あなた)、私に何と――」

しかし、睨まれた当人は冷たいくらいに冷静だった。

「殿下。(ほう)給全額返還に(あたい)する茶番を真に受けられては困ります」

「茶番――!?

切り返しに色めき立たなかったのは玉座とその脇に陣取る三人と他数人だけ、という有様だ。
王女に至っては酷く狼狽していた。

「どういう意味です!?

「殿下。ご質問の順番をお間違えですよ? まずは、何の囮にされたのか。そこを御父君(おちちぎみ)(ただ)しませんと」

「……ほう?」

!!

雷光を(らひめ)かす黒雲のような国王に、万座が静まり返る。

「…………」

セレナスもまた、どうすればいいのか解らない風情だった。

「殿下?」

何も気づいてないくらい平静にラファルドが(うなが)す。

「――――」

けれど、返って来たのは戸惑う視線だ。

(ご自分の立ち位置が解らない、こともあるのでしょうが……これでは、ね)

国王の勘気が怖い、とは解らなくもない。けれど、この程度で黙らされていては、宮仕えで将来を望むことはできない。(やま)しいことを抱えているのは自分達ではない、のだから。堂々と主張すべきを主張できなければ、玉座で容赦なく威圧してくる国王でさえ(・・・・・)減点をする(・・・・・)だろう。

(けれど、此処で見放しては甲斐性(かいしょう)無しと同じ――か。……今日が仕え()めだもんね)

「質問がお有りでないなら、退出致しましょう。陛下も重鎮の方々も大変お忙しい身の上――」

「ほう? 茶番呼ばわりしておいて、ただで済む、と――?」

のうのうと態度を変えないラファルドを、国王の感情が抜け落ちた声が(おそ)う。
だが。
誰もがひたすらに(おそ)れひれ伏すしかない、王の威厳。
それをまさか、ラファルドはくすぐられるような笑顔で迎え()った。

「茶番でしょう? 魔族の侵入を(あらかじ)め掴んでおわされた――とでも?」

騎士団は王女の脱走にさえ、後手に回った。ラファルドとグラディルは現場を目撃している。
そして、国王ガルナード=アストアルが魔族を公国から追放したのは20年は昔のこと。文武において世代交代は進み、魔族が健在だった当時を知る者は少なくなっていた。
元より、魔族の動向を予測するには無理がある。
加えて、現在の公国領土は大陸一つ丸ごと。
魔術や魔力を駆使して隠れ潜むことは朝飯前の種族を把握するには海を越えて他国に人材を派遣するしかなく、魔族の消息を追うことは異国の内情を無断で調べ上げることに等しい。
親密な付き合いの在る友好国相手であっても、無理な話なのである。
ラファルドのきつい皮肉に、国王は眉を()ね上げた。

「……っ、」

「陛下!!

!? ……、――!!

国王は宰相の鋭い制止に目を丸くする。しかし、何事も無かったように黙り込んだ。
ラファルドは退屈そうにため息を(こぼ)す。

「……流石(さすが)は宰相殿。辣腕(らつわん)の評判に嘘は無いのでしょう。あと少しで、殿下に親子の縁を切るようにお勧めさせて頂くところでした」

「――――!!

誰もが絶句して、ラファルドを凝視した。
まさか、国王を挑発するという、前代未聞の馬鹿が居ようとは。
怖い物知らずにも程があり、(しつけ)がなってないにも程がある。
紛れもない嘲笑物だった。
ラファルドがラファルド=セルゲートでさえなかったら。

「魔族――それは、外ならぬ陛下が公国から追放されたもの。その再来は、お世辞にも平穏無事の(きざ)しではありません。真実掴めていたのなら、今日の騒ぎは無かったでしょう。それに、白百合(しらゆり)の姫君と申せば可愛(かわい)がりようが評判ですね。臣下に、眉を(しか)めさせる程だとか?」

その程度のことは今更指摘されるまでもなかった。
その娘一人だけを可愛がった覚えは無いし、女親を早くに亡くした不憫な娘を目に掛けて文句をつけられる筋合いも無い。
何より、国王に向けられる陰口としてはあまりに初歩過ぎていて、どうこうしたい気にすらならないのだ。
いっそのこと、失笑して見せようかとさえ思った――とは、言わずにおくが。

「だから、何だ?」

国王の凡庸な反応に、ラファルドは目線を鋭く研ぎ澄ます。
不敬を問われる一歩手前まで、一瞬で。

「そんな者をおめおめと放り出したなら――放り出せたなら、英雄の名に恥じます。男としても(もと)るでしょうね」

「――――」

剛勇を誇る騎士ですら縮み上がる国王の白眼視を、ラファルドは平然と受け流した。

「我が浅薄な(こと)の葉が、一欠片(かけら)でも貴君の矜持(きょうじ)を損なった――ならば、()返答を。囮とは何ぞ? 人を化生(けしょう)へと()とす(わざ)をひけらかす悪徳を、予め測っていたとは如何なる世迷言(よまいごと)!!! さあ!! 今すぐ申し開きをしませい!!!」

!!

至近距離の落雷の如き激怒を()き出しにしたラファルド。
誰もが息を呑み――国王は。

「……まったく。よくもまあ、此処まで父親に似てくれるとはな……」

心底、(なつ)かしく思う笑顔を浮かべていた。
それが万座の言葉を(うば)っている。
そして、笑顔を消すと、片目だけを娘に向けた。

「セレナス。これがセルゲートだ。二度と忘れるな」

「――は、はいっ!!

セレナスはきつく(しか)られたように縮こまる。

「我が娘を真実案じてくれる真心(まごころ)(まこと)に以て見事。悪戯(いたずら)に困らせたことは詫びよう。だが――囮という言葉にも嘘は無い。勿論、娘を襲った騒擾(そうじょう)に関してではないぞ。魔族の動向を(つか)むのは、骨だ。貴公を初めとする血族の力を借りて尚、な」

「では、囮とは――?」

ラファルドはすかさず畳みかけた。

「それは――、……む」

言いかけて眉を顰める国王。
ラファルドは舌打ちを何とか隠し切った。

「貴公こそ、お――余に言上(ごんじょう)すべき事柄があるのではないのか!?

「……はて……、有りましたっけ、か?」

本気で首を傾げられ、国王の(ひたい)に青筋が浮かんだ。

「貴様っ!! 曲りなりだろうと、公国の(たみ)であろうが!! 民とは王の(しん)である! 我が臣ならば、国王たる余の顔を立てる心得の一つや二つ」

(……いい空気が、すっかりぶっ壊れたなあ……)

グラディルは(巻き込まれたくないので)心の中で泣いておく。
臣下は揃って視線を逸らし、見ないように努める(その実、聞き耳は立てている)始末だった。

「すっかり、忘れてましたね。殿下付きを(たまわ)って以来――ですけれど?」

「何だと!?

「――ファル!!

国王と大人気(おとなげ)ない舌戦を繰り広げる弟に、兄が青筋を飛ばす。
ラファルドは渋々とため息を返した。

「……近衛から奏上(そうじょう)が有ったはずです。如何されました?」

()りぬ!!

「何が足りぬのでしょう?」

「……ラファルド殿!」

近衛騎士団長が跪いたまま、ラファルドを(やわら)らかく(とが)めて来る。
反論は何処(どこ)までも澄ました声だった。

「近衛殿。貴殿の仕事にケチをつけられておいでなのですが? 私は十二分だと思えばこそ、語ることは無いと申し上げているのです」

「…………」

葛藤(かっとう)したのは同じだっただろうに、近衛騎士団長は無表情を貫き、近衛騎士はわずかに複雑な空気を漂わせる。

「――――!!

傍で聞き耳を立てていたかのように、玉座の国王が目をぎらりと光らせた。

(……ああ、近衛のおっさんたち。後で、まとめて(きゅう)だな。主君の前で不満を殺せないのは、騎士の慎みに反する――んだっけ? 飛び火みたいなもんだけど)

近衛騎士にとっての諸悪の根源は、値踏みするように国王を睨んでいる。

(……俺も、とんでもねーのと友人やってるよな。腐れ縁だけどさ……)

素知らぬ顔でグラディルがため息をつくと、国王のきつい一瞥(いちべつ)が飛んできた。

(わわっ!? な、何で俺ま――、いや、他人の振りだ、他人の!! 今ならまだ間に合う!! 断固拒否! 巻き添え!!

それは著しく可愛気に欠ける友人とやらを(たしな)めろ!! という勅令。
公国民であれば無条件で受諾されるはずのそれは、すげなく袖にされた。
驚愕(きょうがく)憤懣(ふんまん)もまとめて噛み殺す破目になった国王である。

「……余とて、近衛が十全に職務を(まっと)うしたと承知しておるわ!! だが、在るだろう? 現場に居ねば解からぬ物が!! 空気とか! 奴の手際とか!! 人と(なり)とか!!! その――」

ラファルドの可愛気の無さは、ごく自然な態度という形を取った。

「困りますね。もっと具体的におっしゃって頂きませんと。ただでさえ、声以外に具体的な物は、何もありませんでしたのに」

「む! 貴様――」

解っているなら、知らん顔をするな!! と突っ込みたかったのが国王である。
けれど。

「予め、殿下のお見合い相手だと解っていれば、自称魔王陛下を、もっときちんと観察させて頂きましたが?」

「――――!?

すっぱ抜かれて、絶句させられてしまう。

「なっ――?! お父様!!?

王女の叫びは悲鳴とも糾弾ともつかない。

「げっ! なんつー悪しゅ……だっ!?

思わず(こぼ)したグラディルに、騎士が背後から制裁を加えた。

「……まったく。これだから、可愛げが足りないと言うんだ……!」

一握りの家臣以外には隠していた事実をぶちまけられ、国王は思いっきり顔を苦くする。
その後ろでは、クリスファルトと宰相が意味深に目線を交わし合っていた。

「では、ご説明頂けますね? 囮作戦とは何です?」

「ふん! 貴様らに押しつ……与えた任務以外に何がある! そんな事より!! どうであった? 魔王を自称するに足る男だったか?」

(ひど)真摯(しんし)な問いかけに、ラファルドも居住まいを正す。

「……判断は難しい、と言わざるを得ませんね。先方も探りに来ていたのでしょう。随分(ずいぶん)、慎重を期されていたかと。流石に、声だけでは――」

国王は速攻、拗ねた。

「存外、役に立たんな。もうよい!」

「へ、」

クリスファルトが釘を刺そうとしたが、国王の一瞥で逆に黙らせられてしまう。
剣呑(けんのん)な顔の弟が、あまりにも不吉でならなかったのだが。

「お父様」

(こわ)いくらいに真剣な顔のセレナスが居た。

「……何だ?」

嫌そうな雰囲気(ふんいき)を隠さないことで、遠慮を促そうとする。
面倒臭い展開が待っていると、容易に解るからだ。

「説明を求めます! 自称魔王殿と見合い、とは如何(いか)なる仕儀(しぎ)でしょう?」

親子はしばし、真っ向から視線を戦わせ合い。
父――国王が先にため息をついた。

「それは――」

「数か月前のことに()座いました」

宰相がさりげなく言葉を(すべ)り込ませる。

「魔法による投げ(ぶみ)が在りましてな。(いわ)く、『身代金を用意せよ! 公国に不吉の影が差す前に――』と」
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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