第62話◆魔人

文字数 4,685文字

「……な! 何ですの――!?

セレナスは(おどろ)きで目を見開く。

グラディルは足元に気を取られた直後、一(しゅん)串刺(くしざ)しにされた。
細く長く()びた、無数の黒い(とげ)で。

今、(がん)前には、赤い()(したた)らせる()っ黒で奇怪(きっかい)な形のオブジェが在った。

棘という棘が生え(つく)した立(ぞう)には、()早、地(はだ)一つ(のぞ)()地さえ無い。

「……くっ、くっ、くっ……は、はは、はーっはっはっ……!! 見たか――!!

「…………」

怪物の、興奮(こうふん)喜悦(きえつ)()ざった満(ぞく)に、人間は(だれ)も言葉が無い。

「ラファルド!!?

セレナスの叱責(しっせき)悲鳴(ひめい)の裏返しだった。

けれど。

「お(しず)かに」

感情(かんじょう)な返事で()き返す。

!! ――――!?

まなじりを()り上げた王女を、国王がその(かた)(つか)んで(いさ)めた。

(何か、方(さく)が在るということですのね!? ……そうでなかったら、(しょう)知しませんから――!!

()()(ころ)すのがやっと、という風情(ふぜい)で引き下がったのである。


「!!?

(はち)()になった肉(かい)(くず)れ落ちて、人間に悲鳴を上げさせる。

荷物(にもつ)を放り出した棘は(ちゅう)(およ)ぐように伸び、()る一点に収束(しゅうそく)し始めた。
(から)み合って(きゅう)体を作り、直(けい)2mにまで成長すると、棘の輪郭(りんかく)と物体としての立体感を(うしな)い、影のように扁平(へんぺい)な円形となった。

(……残骸(ざんがい)が、無くなっている……! ということは――黒い棘のようなものが本(しつ)……? だとしたら、怪物の姿(すがた)も、最初の人間(ぜん)とした格好(かっこう)偽装(ぎそう)? ……変態であることを考えれば、結論――完成形を()った方がいいかな? ……始まった!)

見えざる手が(ねん)土か何かのように、宙に()かぶ、不(とう)明な影をこね回していく。

そして、一定の輪郭が(ぞう)成されていることに、ラファルドは気が付いた。

(人(がた)……! 元は魔族だから――魔人、かもね……)

()中に刺さる主人(セレナス)のきつい眼差(まなざ)しは意(しき)して(はら)()けていた。

輪郭が完成すると、影は(ふく)らむ風船のように立体感を取り(もど)していく。

(きん)肉質の体()、肩と(ひじ)(ひざ)から生える(つの)(ひたい)にも目を思わせる切れ()みを持つ、禿頭(とくとう)の男の顔。
(ねむ)っているように思えた顔がにたり、と(わら)うと異様(いよう)に発達した犬()()き出しになる。
手足の指先は人の物とは()つかない、円(すい)(じょう)(とが)った物だった。

そして、立体的な影絵は黒ずんだ赤という色(さい)を得た物体となり、()動のような痙攣(けいれん)(はじ)めて、異(ぎょう)の命となった。
2mにも満たない身長が(ゆか)()みしめると。

「ふう……。いい目()めだ……!」

「…………っ!!

赤黒い魔の(ひとみ)の一(べつ)()けるように、()族たちが悲鳴を押し殺して視線(しせん)()らす。

人に酷似(こくじ)した魔の面立(おもだ)ちに釘付(くぎづ)けになっていた(えい)兵の一人が(がく)然と(さけ)んだ。

!? あいつは――?!

「(……ちっ)!!

肘の角がするりと伸びて影に(もぐ)り、何故(なぜ)か、衛兵の影から顔を出して、(はら)穿(うが)つ。

「――ぐっ!!

苦痛(くつう)に表情を(ゆが)めた次の瞬間。全身が土くれとなって崩れ()る。

しかし、土は不可視の力で魔人からは遠ざかるように(はこ)ばれ、そこで元通り、衛兵の姿を取り戻した。
おまけに、負(しょう)は無かったように消えている。

「……!?

衛兵は目を白黒させていたが、近くの仲間に小()かれて、警戒(けいかい)(せい)を取り戻した。

「貴様か……!」

角を元のサイズに戻した魔人は(じゃ)魔をした(はん)人をラファルドだと決めつけて来る。

(……魔人に変態して、嗅覚(きゅうかく)が上がりましたかね? まあ、何回か邪魔もしてますし、そこは良しと――)

(かん)(さわ)る――と、」

魔人の(かわ)いて(かす)れた声。(とが)める口調を邪魔するように、口が笑った。

「……美味(うま)そうだ……! お前から、美味そうな(にお)いが――!!

赤い眼球の黒い瞳が真ん丸に見開かれ、口(こう)からまろび出た異様に長い(した)の先(たん)二又(ふたまた)()れる。

ラファルドは心底迷惑(めいわく)そうに糾弾(きゅうだん)した。

()きっ(ぱら)の、理性飛びかけですか……! (たまご)の産み()てじゃないでしょうに……!」

「………食う、……食う、くう……くウ、クウクウクウクウ…………」

魔人の両手が宙を(えぐ)り、飛び掛かりの前(ちょう)のように全身を(たわ)ませると。

「……ぁ、あ。――――っ、ぁあああああ――!!

()し掛かる空間を押し広げるように(うで)を伸ばして、絶叫(ぜっきょう)した。

!?

(まど)ガラスが(のこ)らず粉々(こなごな)になって崩壊(ほうかい)し、広間の天(じょう)にまで亀裂(きれつ)が走る。

しかし、ラファルドは無(きず)(かつ、無表情)であり、崩落を始めた装(しょく)の一部も、半球状の天(がい)(へだ)てられて(わき)に逸れ、人間に悪さをした物は一つも無かった。

「……おい」

国王が冷や冷やした顔で苦情を入れに来た。
好きにさせ()ぎだ、ということなのだろう。

けれど、ラファルドは魔神を見つめたまま()り返りもしない。

「お静かに。変態の()中ですから、手出しはしたくないんですよね。(ぼう)走されると、後始末が大変ですし」

ちなみに、戦場はラファルドの結界に(つつ)まれている。被害(ひがい)の偽装も、音(りょう)の調(せい)もラファルドの意のままである。

「全力を発()される前に、(たた)いておきたいが――」

(さい)強の英雄(えいゆう)は最強の戦士でもある。何処(どこ)となく獰猛(どうもう)な気配を(ただよ)わせていた。

「父(いわ)く、『魔族の変態は疑似(ぎじ)的な進化。下手(へた)危険(きけん)(さら)すと、(そう)定外の事態を(まね)く』――とか?」

「むう……!」

セレル=アストリア公国から魔族を(つい)放したのは公王ガルナードの偉業(いぎょう)だが、一人で成し得た物ではない。
影ながらの助力を()しまなかったのが、公国最強の神祇(じんぎ)(当時)だったラファルド達兄弟の父、ディムガルダである。
その(げん)とあっては、国王といえど無下には出来ない。想定外の事態は、起こさないに()したことがないのだ。

「……では、公国の沽券(こけん)如何(いかが)しまして? 誰も彼もが作戦に理解を(しめ)してくれるわけではないでしょう?」

父親の後を付いて来ていたセレナスは、不機嫌(きげん)(かく)し切れていなかった。

今夜から始まる晩餐(ばんさん)会は(わな)であるからこそ、晩餐会として(しん)実でなければならない。
真実味を持たせる為に、罠であることは必要最低(げん)度にしか通知されていないのだ。
公国が(きゅう)心力を失わない為にも、体裁(ていさい)を考(りょ)することには一定の重みがあった。

ラファルドは少しだけ考える素振(そぶ)りを見せる。

(おう)(ちが)いに国王がむっとした表情を作ったが、ラファルドとしては、玄人(くろうと)素人(しろうと)の間に在る格差を考慮しただけに過ぎなかった。

「そうですね……、それでも、お(すす)めは出来ませんね。陛下が目(ざわ)りな脅威(きょうい)であることは、向こうも()り込んでいるはず。(かなら)ずしも能力が高いと言えない変態したてで、(かく)実な効果(こうか)を上げられる可能性が高い、(そっ)効の戦(じゅつ)は――」

セレナスが不愉快(ゆかい)を表情に(まぎ)れ込ませた。

「自(ばく)、でしょう?」

ラファルドは(うなず)く。

国王は(あきら)めたようにため息をついた。

「それは、最悪の可能性、と()承知下さい。臆病(おくびょう)(そし)りを受けようとも、考慮する義務(ぎむ)からは()げられません」

感情をちらとも見せない横顔を前にしているのに、(なぐ)りつけてやりたい(しょう)動を(かか)えていたのに、感情が(おだ)やかになっていく自分(セレナス)

「……解りました。(つづ)きを」

「魔人の肉体は高(みつ)度の魔力の結(しょう)。自爆を止め(そこ)なえば――現状のレベルで、()害がどんなに軽()に収まったとしても、王都は一から(つく)り直しですね。陛下。()(ねん)如何(いか)(ほど)にあらせられますか?」

台詞(せりふ)の最後は、何処か悪戯(いたずら)めいていた。

「無いっ。覚悟(かくご)も無ければ、()算も無いっ! すっからかんだ!!

開き直った英雄に、ラファルドはため息を(おく)る。

「……、それと。これは(おそ)らく、魔王陛下の言に()るところの『()(がら)』」

「では、あれは――、(たましい)(うば)われ、魔に組み込まれたという――、”人”……?」

愕然とするセレナスに、ラファルドは肯きを返した。

「顔を見知っている誰かが居るのも、当然ですね」

国王のため息が一際(ひときわ)(ふか)くなる。

「……気のせいか? 面(どう)(くさ)い後始末の山が……今から見えている気がするんだが……」

元人間だという魔人の正体は勿論(もちろん)、どういう経緯(いきさつ)で人間を()めたのか、人間だった頃の周辺関係……等々(などなど)、国家を使って、()に入り細を穿(うが)つほど綿(めん)密に(さぐ)り出し、解き明かさなければならないことが山ほど在る。
当然、そこには人も時間も金も()水のように(そそ)ぎ込まねばならず、その為に必要な手続きは(さら)煩雑(はんざつ)で――。
ただでさえ(せい)務に忙殺(ぼうさつ)される国王の日(じょう)(だん)違いに騒々(そうぞう)しくなるだろう。
今から卒倒(そっとう)して、そのまま魂を飛ばしてしまいたくなるくらいには。

「御賢察(けんさつ)(まこと)(もっ)て明確で御座います」

ラファルドはちらとも国王の方を見ない。

どんなに(せい)実に聞こえても、その実、ちっとも気持ちが(こも)っていないのは明白だった。

「少しは(いた)われ! 目上だぞ!! ()!!

「……お父様……!」

(むすめ)はまだ(あわ)れんでくれたが。

「それはまた後日、ということで。さて……、人を()として作った(・・・)魔人――書物に在る通りであれば、マシでしょうか……?」

悪びれないどころか、(はく)情なくらいの(はや)さで実務に戻ってしまった少年に(うら)みがましい視線を一瞬だけ向けて。
国王も意識を切り()えた。

「それはさて、だな」

全力だろう咆哮(ほうこう)を続ける魔人の身体が、ゆらりと宙に持ち上がる。

「…………。……ねえ。やっぱり、今すぐ、速攻で片してしまうべきではないのかしら?」

セレナスは魔神の股座(またぐら)から()れ下がっているものを不快()(にら)んでいた。
怪物に変(ぼう)して以降、魔族はずっと(はだか)だった。
なので、(いや)が応でも見えてしまうのである。

ラファルドの反(のう)は冷静だった。

尻尾(しっぽ)ですよ? あれ」

セレナスの目が丸くなる。

「――え? そうなのですか?」

「魔人というだけであれば、魔神戦(そう)概録(がいろく)記述(きじゅつ)があります。そこからの類推(るいすい)ですが、頭身と同一の全長になるかと」

宙に持ち上がっていた魔人の身体(からだ)――(よう)部、が異音と共に痙攣を起こすと、垂れ下がっているだけだった尻尾が、(むち)を思わせるしなやかな動きを手に入れた。

「……成程(なるほど)(たし)かに」

「陛下っ!! ()一同――、何と(ゆう)長な――!!

(あら)い足音と真っ青な顔で、異(ほう)の大使サーマリウスが割り込んできた。

応答はラファルドである。

「問題は在りません。”(おり)”の中、であることが一点。変態とは、形態や(こう)造――生命そのものとしての在り方の変化です。それには多大なる消(もう)が付き物ですから。捕縛(ほばく)にしろ、掃討(そうとう)にしろ、ガス(けつ)(ねら)うのが一番確実で、一番(おん)当な戦術。それがもう一点。(なお)()が在る、ということであれば(うけたま)りますが?」

「――――。流石(さすが)はセルゲート家……。そう、(もう)し上げるしか――」

サーマリウスの口調は(にが)かった。

そして、ラファルドは、国王と主人の(そう)方から、「初めから、そう言え!!」と、無(ごん)顰蹙(ひんしゅく)を買っていた。
ちなみに、(あらかじ)めの作戦の立案にラファルドは関わっていないが、作戦本部に常(ちゅう)している兄クリスファルトに最前線の情報を流しているのはラファルドである。

咆哮が止まり、三つの目に(やみ)色の光が(とも)る。

「見物、()苦労」

ふわりと()り立つと。

「さあ――、食事の時間だっ!!!」

全身から魔の力を()びた光を放ち、広間を一瞬で魔の色で()(つぶ)した。


「……くっ、くっ、く……、……ぐっ、……ぜえ、ぜえ……。――くぅっ。見、た――か、これ、――で、やっと――食える、食、事に――」

(ほこり)が視界を(ふう)じる程騒々しく()(おど)る広間で、何が見えているのか。
魔人は(つか)れと()えに(さいな)まれながらも、狂喜(きょうき)()き出しにした。

だが。

「それはそれは、ご(しゅう)傷様でしたね」

?! きさ、ま――!?

可愛げの無い()まし声に魔人が目を剥けば、細身の衛兵――ラファルド、が姿を(あらわ)す。

そして、粉塵(ふんじん)(あらし)の中、人差し指で宙を()げば、渦巻(うずま)く風が広間を()き清め、被害が無いという現実が明らかになる。

「おイタも茶番(げき)も、肝心(かんじん)なのは引き(ぎわ)此処(ここ)にて終(まく)といきましょうか」

ラファルドが手にした(やり)で宙を()ると、黒く(かがや)く光の輪が魔人を拘束(こうそく)して、()め上げた。

「ちっ!?

魔人は(した)打ちする。

そして。

「はて、それは(こま)った――」

傲岸(ごうがん)でありながら、何()ない台詞が差し込まれた。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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