第40話◆犬と猿と百合(2)・・・改
文字数 2,660文字
セレナスが男子更衣室で胸を張る。
昼食を終えた王女様御一行(主人:1、仕え:2)は、客人――フィルグリム主従、とは現地解散して執務室に直帰。
そして、なぜか
「…………此処で、ですか?」
ラファルドが首を
男子更衣室は着替え用のロッカーがある以外は物置同然の、雑然とした部屋だ。
テーブルや
最低限度の手入れがされただけの物置と言った方が正確なぐらいだ。
ラファルドとグラディルは制服――戦場で大工仕事や工具の管理を担当する工員服を改造した(王家の紋章が
だが、セレナスは客人との昼食の為に用意した正装のまま。
あまりに華やかで美しいその様は、正に
「ええ! まだ、内聞という段階ですもの」
なぜか、自信満々のセレナスである。
「……誰も知らねえのに、内聞も
と、グラディルが突っ込むと、
「お黙りなさい!」
手にした扇(宝飾で装飾済み)も同時に飛んできた。
難なく受け止めたグラディルがラファルドに放り、ラファルドがセレナスに手渡す。
「それをこれから打ち明けようと言うのです!!」
「…………」
ラファルドのため息には諦めが紛れていた。
とりあえず窓を開けて換気に努めつつ、丸椅子を発掘してセレナスに
グラディルは埃っぽいソファに
「……ふわあーあ……後、よろしく……!」
グラディルが
「――え? ちょ、ちょっと!」
ラファルドが
気持ちは解らなくもないが(腹が
連帯責任の四文字も脳裏にチラついたが、一番困るのはセレナスと一対一にされてしまう事。
主君たる王女の
「選ぶことを許します。男として再起不能に
足音はおろか、
なのに影が差した途端、グラディルはがばり、と
「――おい! 脅迫だろ、
「不敬罪、という言葉も理解できないのでしょう? お猿!」
セレナスが扇でグラディルの頭を叩く。
「誰が猿だっ!?」
結構な痛打だったはずだが、叩かれた側はけろり、としていた。
「……殿下、ラディ?」
不毛の二文字がラファルドの脳裏に浮かんでいたが、最優先は
「私は、相談を持ち掛けていましてよ? ラファルド様」
つん、と澄ますセレナスにラファルドは
「呼び捨てで結構です。任務中ですから」
「解りました。で?
セレナスは厳しい視線をグラディルに向ける。
「……わあったよ。しゃあねえなあ……!」
ため息をついて渋々
閉じ切られた扇の一撃を、今度は腕の甲で受け止める。
「
くるりと背を向けた王女にあかんべーをする
「
それは、
「――え?」
「さ! 本題に入りますわよ!」
「………けっ!」
(ちょっと! 蒸し返すのは勘弁、だよ!?)
(うっせえわ!!)
代わりにというわけではないが、ラファルドとグラディルで第二ラウンドが始まりかける。
だが。
「――あ。
グラディルが
「ああ! そういえば……!!」
ラファルドも妙に具合が悪そうだったマグスのことを思い出した。
「……何ですの?」
「そうでしたの……。では、人を
「?!」
宮城で面会の為の場所と時間を取っても構わないと言うセレナスに、グラディルは軽く目を見張った。
けれど。
「……いや、
「体調に不安があるようでしたし、久しぶりだとも言ってました。他人を向かわせるより、本人の方がいいでしょう」
「そうですか……。では、特別としましょう。早退を許します」
素直な許可がラファルドには意外に思えた。
「よろしいのですか?」
「
「…………。あんがとな」
グラディルのぶっきらぼうな感謝に、しかし、王女は
「
そして、グラディルと一緒に退出しようとしていたラファルドの腕を
「ラファルドは、関係ありませんわね?」
「え? ……あ、でも――体調が優れないようでしたし、看病が必要な場合もある、かな――と」
セレナスの笑顔が輝く。
妙に
加えて。
「ファル。お
「…………」
柄にも無いまともな
「ちょっと! それはどう――」
「まあ……そうだけど」
「――!!」
「よろしく頼んだ。後、殿下を追いかけた時、お前を介抱した所まで飛ばしてくれ。助かる」
セレナスと残されるのは不安だったが、
正直なところを言えば、薄情者! と糾弾したかったのだが。
「…………しょうがない、か――」
「ん、サンキュ。じゃあな!」
「明日の朝は出勤だからね!」
念の為に釘を差し、〈転移〉を発動させる。
光に
嫌々という空気を(極力)折り畳むと。
「……さて。お話の続きを
王女の笑顔は綺麗だった。
「――ええ。ですが、その前に」
どすっ、とセレナスの鉄拳がラファルドの腹にめり込んだ。
「――ふっ、ぐぅっ、う、う――!!」
セレナスは怒りの感情を
「一日でも早く、