第41話◆昼食を摂りながら(1)・・・改

文字数 5,682文字

「――以上の……提案が、殿下から御座いまして――」

ラファルドはこっそり腹を()でる。
もう(いた)んでいないはずなのに、どうしてか気になった。
魔王ゼルガティスとの急な会見があった翌日の昼。
ラファルドとグラディルは王女セレナス、クリスファルトと共に明星(みょうじょう)の小庭園で豪華な昼食をかこっていた。
今日こそは娘と共に!! という国王の意向(もとい、ゴネ)が反映された結果である。
だが、セレナスの相談――魔王ゼルガティスに反(こう)する魔族を捕らえて貸しを作ろう! という、もしかしなくても物騒な企み(ごと)、を打ち明けたのはそうするしかなかったからだった。

「……(まった)く。何の為に明星の小庭園を選んだと思ってるのだ!?

聞かされるや(いな)や、げんなりした顔の国王がラファルドを(とが)める。
明星の小庭園は季節の風情(ふぜい)を味わうことを目的に設計された中庭で、公国においては異風である木造の四阿(あずまや)を中心になだらかな丘陵(きゅうりょう)地をイメージした景色が広がる。此処(ここ)で流れ星を見ると幸せになれる、という(うわさ)があった。
ロマンティックな気分に(ひた)りたいのは権謀術数が横行する(まつりごと)――現実、を一時(ひととき)でも忘れたいからであって、まさかこんな場所でまで(はかりごと)はしないだろうという思い込みの不意を突かれたりする為ではない。

「(知りませんね、そんなこと)幸せになりたいからでは? 昼間では、星も(ろく)に見えませんけど」

しれっと切り返したラファルドに国王の機嫌が悪化する。

「貴様と幸せになってどうする! (めし)不味(まず)くなるわ!!

「……昼間って、見えないだけじゃなかったっけ?」

星は空に(またた)いている――幸せになれ、というからかいだ。
ラファルドはにっこりと笑う。

何時(いつ)でも(ゆず)るよ、ラディ。(うるわ)しい師弟愛もありだよね」

()らねー。食費ばっかりかさむ粗大ゴミなんて、面倒見切れないし。――あ。師弟愛よりも麗しいのは親子愛、……だっけか?」

旺盛な食欲を発揮しているグラディルの台詞の後半は独り言めいていた。
国王と王女の双方から飛んできた銀食器(殺気込み)を、(なん)なく撃ち落とす。

「さあね。価値観なんて、人それぞれでしょう」

「ラディ君、ファル! ……食事は楽しむ物だと思うんだが……?」

クリスファルトの(ひたい)には(弟にしか見えない)青筋があった。

「でしたら、兄さん。どうぞ、小父(おじ)上と幸せになって下さい」

「あのな。俺にだって選ぶ権利が――ではなくて、だな。殿下の御提案だとしても、何故、今持ち出すんだ? 食事時に仕事の話を()し返さなくてもいいだろう」

間髪(かんぱつ)入れずに反論しかけて国王の白い目に気付き、さりげなく()道を修正する。
ラファルドはため息を隠さなかった。

「……そうしたいのは山々ですけどね……。無理なんです」

「…………」

「?」

「……まあ、俺でもお前と同じことを目論(もくろ)むけど」

ちなみに、沈黙を選んだのはグラディルと国王で、疑問符はセレナスだ。
「どうして?」の一言が主人から出てくる前に、ラファルドは口火を切った。

「何と言っても、魔族――それも、魔王(がら)みの案件ですし。会議に掛けるのが一番まっとうですけど……(つぶ)されますね。議事になることはおろか、御提案があった事実自体が抹殺されます」

クリスファルトが(うなず)いた。

「だな。陛下が魔族追放を成し遂げられたこと――それが、裏目になる。他意など皆無だとしても、陛下の威光、統治に真っ向から挑戦するという意味を含んでしまう。それこそ、今回のような状況じゃなかったら、自分で自分の死刑判決に署名を入れるようなものだな。そうでなくとも、魔王絡みだ。誰も関わりたがらない。無かったことにした方が、お互いに幸せだろう」

それはラファルドもセレナスも承知している。

「ですが、殿下の御提案は好都合(つごう)なんですよね。王の側から、能動的に動けますから。宰相殿すら異を唱えられないウルトラCにも出来ますし。話が(うま)い方向に進みそうになければ、流してしまえる。そもそも、周囲から突き上げを食らわされる状況はNGですしね」

国王が感情の読めない声で合いの手を入れた。

「あと一つ王が動く理由が有るとしたら、何だと思う?」

指名されたわけではないが、応じたのはグラディルだ。

「王様同士の外交だから、ってことじゃないか? この前の会見は御伽噺(おとぎばなし)の中の伝説の存在としてではなく、『魔族の国家』という組織の頂点としてだった。王を戴く国が他国の王様を迎え撃つなら、自国の王様が出しゃばって来なくちゃ駄目だよな?」

ラファルドの声は笑っていた。

「正解。でも、王を戴く国で一番の大事(おおごと)と目されるのも王が絡む案件。余計な()目がある場所ではどんなに慎重に振舞ったとしても、”迂闊(うかつ)”になりかねない。何処で誰の目が光り、耳が傍立っているのか。それを把握しきるのは小父上――国王陛下をしても困難。けれど、絶対にそうなってはならない。魔族絡みの案件は、王が絡まなくともデリケートになりますから。では、どんな状況を選べばいいのか――」

わざと発言に隙間を作ると、セレナスが滑り込んで来る。

「みだりに吹聴(ふいちょう)したら、かえって顰蹙(ひんしゅく)を買う。そんな状況がいい、ということですわね。それも、わざわざ念押しする必要が無くて、他言(たごん)無用こそが常識である時間と空間。王族なら、私的(プライベート)。例えば、食事時のような――?」

答え合わせでもするように、セレナスはラファルドを見た。

「……ということです」

困り顔は正解の(あかし)である。
そして。

「付き合わされる俺は、いい迷惑だけどな」

クリスファルトは一番心無いことを口にした。

「……兄さん?」

意味深な笑顔を浮かべたクリスファルトの代わりに、答えを出した者がいたのである。

「昔々()る所に、自分の人間関係の為に国王たる余を売り飛ばした不忠者が居てな? その汚名を(そそ)ぐ為――げふんげふん!」

(……それがこれ――ということは、父さんを頼りたいほど手詰まりってことか……)

後は単純に、食事時の話題として愉快(ゆかい)ではないということらしい。
魔族を追放して平(おん)を得た国で、魔族の絡んだ案件を持ち出す。
神経を逆撫でされるようなものだし、検討するならば政治絡みにならないはずがない。

(なら、此処は好機――進められるだけ話を進めておくべき、だね)

ラファルドが王女に目配せをすると、(うなず)きが返って来た。

「お父様。食事の味わいを(さまた)げてしまうことは申し訳なく思いますが、現状は様子見ではなく、仕掛けてみるべきだと思うのです」

「……セレン」

国王は食事の手を止めることなく、ため息をつく。
クリスファルトは胸中で苦笑した。

(何も、お前が言い出さずとも……、だな。宰相殿や騎士団長殿が発案者だったなら、容赦(ようしゃ)は無用。陛下として専断されただろう。現状、未知数と化しているから困るのだ。勇み足も及び腰も遠慮したいからなあ……。動くにしろ動かぬにしろ、決断を下す為の取っ掛かりが欲しいのは確か。殿下の()立場を思えば、大人しくしていた方が無難(ぶなん)だろうに……。……それを解らない弟ではない。と、なると――)

「殿下、お尋ねしても?」

如何様(いかよう)にも。クリスファルト様」

「では。何故、斯様(かよう)に思われるのかをお教え願いたい、と」

「先日の魔王陛下の(げん)を覚えておいでですか?」

「と、言いますと?」

国王が何食わぬ顔で割り込んだ。

「多分、『此度(こたび)の迷惑、まだ終わってはおらぬ』だろう」

国王の勘の良さに呆れるクリスファルトだが、なまじ、先日の会見の一部始終を暗誦できるほど克明に記憶していればこそ、どの台詞がセレナスの意図するものなのか選んでしまうのである。
そして、クリスファルトが自身の手綱をわざと緩めていることを把握しているのが国王だった。

「ええ。先日の騒動の本質は、魔王陛下への牽制。公国が魔王陛下を歓待する(もよお)し物を決行すれば――」

「……もぐ、それなりの確率で、不届き者が乗り込んで来る――? ……もぐもぐ……」

「……!!

食事を頬張(ほおば)りながらのグラディルの(つぶや)きは何処か懐疑的である。
主人の意を汲まない言動に、セレナスは叱咤(しった)の視線を飛ばした。
けれど、懐疑的なのはグラディルだけではなかったのである。

「厳しいですね。有り得ない話ではない。それだけでは、百官は動かないでしょう」

「そう……、なのですか?」

グラディルを補足するようにクリスファルトが同意すると、セレナスは神妙な(おも)持ちになった。
グラディルは多分に私情を持ち込む(可能性が高い)がクリスファルトは実務の経験者として判断している、という信用の格差と、一応ラファルドと練り上げはしたものの、初めてのプレゼンという王女自身の経験不足の現れだ。
現状、魔王の(きょう)威は世界レベルで知れ渡っている。
加えて、”魔族の国家”との交流は前代未聞であり、魔族そのものとの基本的な相互理解の道筋すら未知の領域。
上手く行かない保証は十二分に担保されているが、上手く行く保証は一分の裏打ちも無いという有様である。
そんな状況で普通に百官会議(公国における国会のようなもの)に掛けるだけでは、「寝言は寝てから!! にして頂きたい!」で終わる話なのだ。
しかし。

「気落ちされる必要はありませんよ、殿下。無理難題という話でもありませんしね」

「……まあ!」

ラファルドのフォローにセレナスの表情が明るくなり、クリスファルトが目を見開く。

「ファル!? それは――」

しっかりして下さい、と言外に釘を差せるほどラファルドは澄ましていた。

「お忘れですか? とっておきの切り札が有るんですけど?」

「……切り札……?」

ちんぷんかんぷんなクリスファルトとグラディル。

「――まさか!?

ぎょっとした国王の食事の手が、(つか)の間止まった。

「はい、魔王陛下ですね。先方に婚約を(あきら)める意思はありません。つまり、公国から色良い手(ごた)えを引き出す努力をされる腹積もりをお持ち、ということです」

ラファルドは国王の察しの良さを評価する。
……国王の承諾をもぎ取ることが目的の根回しであるのだが。

「…………」

にっこり微笑(ほほえ)むラファルドに、国王と兄は「悪いことを企んでいる……!」と(あき)れ、突っ込んで(はんげき)を貰いたくないグラディルは目を逸らして他人事を装った。
セレナスは彼らの反応を慎重に、何処(どこ)か好奇心を(のぞ)かせながら窺う。

「しかし――!」

「確かに、一から十まで、公国がお膳立てをするのは、無理です」

クリスファルトを(なだ)めるようなラファルドに、国王が無表情で割り込んだ。

「当然だ。公国中からアレルギー同然の総スカンを食うわ!! そもそも、そこまで甘やかしてやる義理も何も無い! しな」

クリスファルトも落ち着きを取り戻す。

「公国の内情を抜きにしても、魔族と付き合いを持つのは頭痛の種でしかないんだぞ?」

「諸外国の反応ですね? それこそ、魔王陛下から求婚があったことを提示するだけで済みます。魔王と事を構えろ、などと指図される筋合いは有りませんし」

魔族の国家とそれを否定して包囲する諸国の戦争が膠着(こうちゃく)していることを意識しての、ラファルドの発言である。
筋合い云々は国王を始めとする公国の本音でもあるのだが。
外からの苦情を遮断できるのは安心できる要素、ではあった。

「……魔族の国だけでも頭が痛いだろうに、海を超えて苦情をねじ込む苦労など背負いたい国は無いよなあ……。だが、魔王陛下を借り受けることをどう魔王陛下のお国と擦り合わせる? 解っていると思うが、我々には魔族への伝手(つて)そのものが無い。まさか、それこそ諸国に仲介を頼むなど不可能だぞ?」

「……もぐ。ですよね。折り合える余地が在るなら、とっくに停戦してるよな。膠着した戦線なんて、()持するだけで大損だ。……もぐ」

前線に立つ人間の衣食住。その維持には言うまでもなく金が掛かる。おまけに、日々消費されていく。
戦線に流れ込む物資、情報、人材。潤滑である為にも、金が必要である。
戦端とまでは行かない小競り合いでも、時に混乱が発生し、損害が計上され、綻びを縫い止める為にさらなる人、もの、情報が莫大な額の”戦費”と共に注ぎ込まれていく。
傷つくほど、加速度を伴う速さで。
勝利してなおうずたかい(・・・・・・・)損耗と損害の山、山、山……。
勝ちも負けも無いまま損害と損耗とがかさんでいく膠着は拷問にも等しい”消費”しか生まない。
それでも逃げられない。”自分が正しい”という正義の為に(・・・・・)突き進んでいく。

「まさか、実は停戦したいんです! という国情を持つ国を探る所から始める気か?」

クリスファルト、グラディル、国王の三者からの否定的見解と(すい)論に、ラファルドはため息を(こぼ)す。

「そこまで(ゆう)長ではありませんよ。ただ、先日お見えになった魔族の王様は自国も、それを包囲する戦線も丸っと放り出されておいででしたけど」

「……また、切り札か……!」

国王は嫌そうな顔でラファルドを見()る。
ラファルドが返したのは澄まし顔だった。

「ええ。折角(せっかく)の切り札ですから、有意義に生かしませんと。ですので、魔族の国家での種まきは、魔王陛下にお願いします。……殿下が(おそ)われた事件そのものが、先方の持ち込んだごたごたですしね。慰謝料(いしゃりょう)としても、適切でしょう」

「……がめついよなあ……」

「ラディ?」

ぽつりと零したグラディルをラファルドが冷たく掣肘(せいちゅう)する。
グラディルは(あわ)てて素知らぬふりをした。

「しかし、聞こえの悪さはどうする? 魔王陛下に反抗する勢力は現状、ゲリラ的存在だ。(えさ)()くからには是非とも食いついてもらわねばな」

獲物をおびき寄せる為には、魔王が公国に滞在していると知られる必要が在る。
人族の国家に魔王が、それも歓待を目的にして。
そうと知られるのは、知らせるのは、人族と魔族のどちらにとっても、聞こえのいい話ではない。
王に従うことを旨とする公国の貴族においてでさえアレルギー同然の反発が返って来るのだから、市民においては尚の事根深い嫌悪と恐怖と拒否があると理解しておかなければならないのだ。
けれど。

「その心配も無用ですわ。魔王陛下が公国の賓客(ひんきゃく)、などと触れ回る必要はありません。普段通り、遠方から来賓が有るという程度で十分ですから」

何を思ったのか、グラディルが首を傾げた。

「……なんか、婚約話()った意味が無くねえ?」

「でしたら、お猿が結婚あそばせ!」

「断る! 男同士は趣味じゃねえ!」
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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