第49話◆鬱屈・・・改

文字数 5,393文字

「……なあ、ファル」

「……何? ラディ」

「俺、そろそろ来期の勇者試験に向けて、準備を始めたいんだけど――?」

ラファルドは疲れ切った風情(ふぜい)で、グラディルから目を()らした。



魔王の(ちん)入が在った会食から二週間後。
少年二人は王宮の片(すみ)で、番兵の真似事(まねごと)をしていた。
利き手に槍を、(さか)手に盾を、腰には剣を()いて守るべき扉の前で立っている。
真似事なのは兵士らしく見えるようになる為の訓練だからだ。
正式な任務であれば、頭に(かぶと)、腕に籠手、足に具足(戦闘用に加工された(くつ))が追加される。
どちらも兵士になるのは生まれて初めての体験だった。
扉を正面にして右手がラファルドで、左手がグラディルである。
もう一つ特徴を上げるなら、近衛(このえ)衛士(えじ)の兵装を着ているのがグラディルで、兵装に着られているのがラファルドだ。

「割のいいアルバイトってことで――(あきら)めて」

「……どの辺が?」

兵士出身の勇者は有り得るとしても、突っ立っているだけで勇者になれたという話は何処にも無い。グラディルは本気だ。
けれど、ため息をつきたいのはラファルドも同じだった。
相違点は自分の置かれた現状にため息をついている(グラディル)のと、終わる気配を見せない愚痴(ぐち)にため息をつきたい(ラファルド)、という部分に在る。
門番という兵士の職務にあまり意義を見出して無いことが共通点だった。
ちなみに、前方一点を見据えたまま、微動だにしない。
様子見(監督兼試験)という名の粗探しが随時発生しており、必要以上の減点を貰わない為だ。
ラファルドもグラディルも他人の気配には(さと)い人種であり、ちっとも減点が入らないと教導役の先輩方からはすこぶる不評だった。
私語は本来禁止であるべきだが、「素人(しろうと)相手に初回からそこまで飛ばしたら、訓練にならない」のだそうで、今回は特別に採点項目に入っていない。
実際、かれこれ二時間は立ち続けで、私語が出来るから精神の安定が計れている部分がある。
勿論、後日に本職の水準で実施される実地試験が待ち受けているのだが。



「公国公認の勇者になるんでしょ? だったら、人脈が在った方が楽になれるよ、……きっと」

「ただ突っ立ってるだけで築ける人脈って……?」

「…………さあ?」

かなり適当が入っている相槌(あいづち)のせいなのか、グラディルの陰鬱(いんうつ)さが三割増しになった。

「なあ、俺達って即席の付き人だよな? 週末くらいは休()で良くないか?」

現状、二人は宮城での寝泊(ねと)まりが続いており、職務上必要な部分以外は主人たる第三王女セレナスの行動範囲より外には一歩も出られていない。
加えて、セレナスは喫緊(きっきん)、王女にあるまじき行為に走って顰蹙(ひんしゅく)を買ったばかりだ。
なので、その行動半径は極めて狭く、幽閉なのか、籠城(ろうじょう)なのか、はたまた反省なのか解らない毎日となっていた。
宮城から解放されたい衝動が()まっていても、不思議なことは何も無い。

「本気でお休みするの?」

二人の週末には厄介で重要な、セレナス王女発案のイベントが控えていた。
それは、かなりの確率で荒事(あらごと)(から)む――というよりも、荒事に化ける代物(しろもの)。三度の飯よりも荒事が好きな(のでは? とラファルドが推察している)グラディルにはあるまじき言動に思えて、ラファルドは()に返っていた。

「まさか。美味(おい)しい食事と美味しい肉体労働は、美味しく、(さら)って行く!」

一部、妙な言い回しが(まぎ)れていた気がしたが言動自体は普段通りであり、ラファルドは突っ込む気力が()えていく。

「じゃあ……、何が不満なのさ?」

気力が限界ならば突っ込まなければいいのだが――会話はいずれループしてしまう(現状で(すで)にもう、10セットはループしている)。
その不毛さに対するラファルドの忍耐もまた、限界を迎えつつあった。

贋物(にせもの)疑惑がある、どっかの殿下」

ラファルドは気力を、若干(じゃっかん)(ふる)い立たせる。

「……その心は?」

「暴れさせろよ! 慰謝料も込みで!! なんで俺にだけ、あんなに当たりがきついんだよ!? やってられるか、畜生! ってレベルだぞ、もう!!

「(……あー、それね……)まあ、殿下もどちらかと言えば活発な(ほう)だし? ラディに発破をかけて()さを発散させてるんじゃないかなあ」

「代われ。頼むから、代わってくれ。後、慰謝料は金銭で。少しは家計の()しになるよな」

王家が払う慰謝料だ。少しどころではない。かなりの足しになる。……(もら)えたら。

「無理だと思うよ? ラディぐらい横柄な態度の仕え(びと)って、そうはいないから。陛下の手前(てまえ)も在って、見逃されてるけど」

「……だったら、」

俺の脱走も見逃せよ、と続くはずだった。
グラディルの動向に監視の網をかけているのが国王ならば、脱走を実力で完封しているのもしばしば、国王その人である。それが国王の格好の憂さ晴らしになってしまっているというのは、一応、秘密だった。
そして、グラディルが憤懣(ふんまん)を爆発させるべく溜めを作った瞬間、攻守が逆転したのである。

「その分? とでも言うのかなあ……。騎士団からの当たりがきつくなってる、気がするんだよねえ……加速度的に」

台詞(せりふ)の最後はほぼ完全に無表情だった。

!!(やっべえ……、キてたかよ! キレられたら、俺よりも洒落(しゃれ)になんねえって!!)」

「ねえ、どう思う?」

話を振られた途端、グラディルの心臓が()ねた。

「――え? あ、いや……まあ、俺が言うのも(なん)だけど、殿下のせいだろ、殿下の」

「なんでさ?」

(こも)った怨念に気圧されたわけではないが、グラディルは目を丸くする。

「……知らねえの? 騎士団のアイドルなんだけど。……名前負け百合(ゆり)殿下も含めてさ」

現公王には五人の娘が居て、その全員が騎士団で人気を博しているのだという。
セレナスは文字通り、三女である。

「そんなの、知ってる――はあ?」

国王の娘が騎士団のアイドルであることと自分達への当たりのきつさがどう関係するのか。

「上手に猫(かぶ)ってるからだろ? 偶像ってだけあって、正体見えてねえし」

「で?」

(うらや)ましがられるんだよ。『殿下のお姿を、お声を、お眼差しをあんな近くで、毎日、だと――!? 許せん!! いや、許さん!!』てな具合でさ」

「……はあ?」

騎士団員の思考と感性の回路がちっとも理解できない! と軽蔑(けいべつ)してくる。
正体を知る(※第三王女の)までは割と素直に憧れていた部分が在るグラディルは、苦笑を返した。

「気持ちは解らなくもないが、俺に聞くな。……正体知るまでが花だったよな……」

「……じゃあ、悪い感じはしてなかったんだ?」

「このバイトが始まらなかったら、な。魔王のおっさんもいい趣味してんな、で済んだ」

「そっか……」

「で。お前の機嫌(きげん)が直った所で、俺の鬱屈(うっくつ)もどうにかしてもらいてえんだけど?」

ガス()きを(はか)ったことがバレたのは、さりげない切り返しのせいだ。
短くも浅くもない付き合いの二人なのである。

「ん? え、――あ。あははは……。だったら、このままがベストだと思うよ?」

「んでだよ!」

どうにかしたいのに、どうにもしないことが最良の解決策だという。
頓智(とんち)ような悪友の言動に、グラディルは一気に拗ねを加速させた。

「現状、魔王陛下が婚姻に本気だからね。公国(こっち)の想定は婚姻反対派の実力行使。とばっちりを食わせるなら、王女の方だよ」

「……嫌がらせにも、示威(じい)にもなる、ってか?」

政治にも軍事にも戦略は重要な要素。だから、話が通じるのである。

「そ」

「師匠はどうすんだ? 何で、本命にならないんだよ?」

「魔王陛下の面子を(つぶ)し過ぎるから。縁組の要請が口実でない限り、魔王陛下の方が(だま)ってないだろうね」

「自分で自分の国を潰す、ってか!?

こういう時のラファルドは無自覚に表情と感情が無くなる。
だから、グラディルが茶化(ちゃか)すのはわざとだ。
入り込まれてしまう(・・・・・・・・・)と、異能の抑制が甘くなる。(ほとばし)りは優秀な素質の証であるが、危険性でもある。出来れば止めてやって欲しいと頼まれていた。
ラファルドがどの程度に居るのかあたりをつける釣り針を投げて、安全圏に居るのなら、反撃と共に人間らしい(・・・・・)感情が戻ってくる――それが経験則だ。
しかし、この時のラファルドは真顔で肯定したのである。

「元々、魔王に魔族は必要ない。魔を産み、増やすことが出来るから。自身に忠実な手下――それだけでいいなら、自分で作った方が早いんだよ」

唖然(あぜん)としつつも、グラディルは突っ込み所を逃さない。

「おっさん……男だよな?」

「性別は関係無いね。……断言できるのは、過去の記録が残ってるからだけど」

「って、ことは……?」

慎重に(首は動かさずに)伺うグラディルに気付いたのか、ラファルドに感情が戻った。

(かな)う限り、したくないんだろうね。だから、ギリギリの線を探ってるんじゃないかな?」

「それが犯人を探し出して、(つる)し上げ――かよ。思ったよりも、王様してやがんなあ……!」

グラディルもこっそり一安心する。
なのに。

「だねえ。陛下――君のお師匠さん、もそれを感じてるからこそ、殿下の()提案に乗って下さったんだけど。それ、不意にしていいの?」

嫌な方向から攻めて来やがるな! と、表情で語る破目になった。

「……俺がやりたいのは、腹いせの為のサンドバッグじゃねえ! 招待客――は、柄じゃねえから無理でも、給仕(きゅうじ)に化けて息を潜めて――とか! そういうのだよ!!

「……ああ、そういうこと! でも、それこそ本職の役目だよね。連携がかえって負担になるような玄人(くろうと)もどきが紛れ込んでも、邪魔なだけ。そうでしょ?」

「まあな……。でもよ、名誉職だよな? 王族の為の、目立つ護衛ってのは!」

名誉な職務だから気に入らないという。
背伸びに間違いは無いが、らしい気もした。

「……(なるほど。現場には出られる。でも、美味しい仕事――戦闘とか? は、先輩方に全部(さら)われるって思ってるんだ……。自己評価、(から)いなあ……。天狗っ(ぱな)も困るけど)それは、まあ……」

実のところ、ラファルドは現状の配置を間違った評価だとは思っていない。
扉の奥では国王、第三王女、魔王陛下他数人が陰険な悪(だく)みを真摯(しんし)に、真剣に張り巡らせている。
これから起きることを思えば、今も本職が出張して来て不思議ではないのだ。
むしろ、随分(ずいぶん)高く買われたものだと(あき)れてすらいた。
悪巧みの舞台となる週末の王宮主催大晩餐(ばんさん)会は、(えさ)だ。
何がしかの騒動が起きることが想定され、そうなることを期待された(おとり)
当然、高度に潤滑(じゅんかつ)な連携が構築でき、機能させられる本職を多数紛れ込ませる。
そこにたった数人、実力がちょっと飛び抜けているだけの場数不足を紛れ込ませても邪魔なばかりか、穴となって最悪、(わな)だと見破られる原因になりかねない。
その程度のことは当たり前のように解っている連中が、わざと紛れ込ませるのである。
飾りだとしても、物騒なお飾りであることを期待されているのだ。
加えて、グラディルの憤懣の一因を担っている第三王女付きは嫌がらせでも、利かん坊への(きゅう)でもない。

(貧乏くじとしか思ってないから、気づかないのかな? 先日の、誘拐(ゆうかい)未遂(みすい)に付随した荒事への対処から生まれた正当な報酬(ほうしゅう)――評価、だってこと)

騎士を初めとする戦闘職に、王族の護衛兼雑用である付き人を任せる。
それはグラディルも解っているように、名誉職(実用性が皆無だとは言わない)だ。
ラファルドとグラディルは先日の、誘拐未遂に付随した荒事で実力を示した。
つまり、相当分の負荷を担ったと国家が判定したのである。
そのことへの褒美(ほうび)慰労(いろう)が第三王女の付き人という栄誉なのだ。
ただし、ラファルドもグラディルも若い。
この種の栄誉を貰うには若過ぎるくらい、若い。だから、やっかみが発生する。”生意気だ”という反応が周囲から返って来るのだ。
しかし、それは認められたからでもある。
加えて、(くや)しかったら(最低でも)同程度の勲功(くんこう)を立ててみろという、やっかむ人間への(げき)でもあった。

(……まあ、それを考慮しても、多少は過分な気がするんだけどね。若手の成長株とか差し置くほどのことか――とは思うし。ただ、見方を変えれば、真剣ゆえに余裕……余力、かな? この場合、が無い――ってことにもなるんだけど)

ラファルドやグラディルの先達に当たる人材に奮起を(うなが)しているのか。
貴重な人材を()くには(あた)わないほど余分な事なのか。
さもなくば、もっと育てという叱咤(しった)激励なのか――。
いずれにしろ、危険を多分に(はら)んだ”褒賞”であることに間違いはなさそうだ。

「俺より弱っちい本職が居やがるのに、どうして、目立つばっかりの壁の花なんだよ!!

不満の(ふん)出が大声という形を取り始めたグラディルに、ラファルドは(あわ)てて静かに! の仕草で(たしな)めた。
監督役に聞かれていたら、間違いなく減点対象になる。

「そんなの知らないよ! ――って言いたいけど。……察してないの(内緒だね、当分。糸の切れた風船になられても鬱陶(うっとう)しいし)?」

「……あの、凶暴馬鹿殿下の陰謀だってんだろ!? 解らいでか!!

姿が見えない=居ないではない、ことを忘れているのか。
本職に灸を据えてもらった方が反省できるだろうと判断して、ラファルドは巻き込まれないことを選んだ。

「根・回・し。そんなんだから嬉々として喧嘩(けんか)を売りに来るんだ、って、学習しなよ。ちょっとは」

「うっせ! 俺は卑屈になったりなんてしねえからな!!

連帯責任の四文字を忘れていなかったら、ラファルドはどんな対応を選んだだろう?
後日、詫びの一品の為になけなしの小遣いが目減りする、厳しい現実が待っていたグラディルである。
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登場人物紹介

登場人物を紹介していきます――のコーナーなのですが、

作者にちょっと暇と余裕がないので、とりあえず、名前がメインになります。


申し訳ありません!


基本的には短編集の時と同じように、適宜かつ随時、継ぎ足していく予定です。

よろしくお願いします!

●グラディル=トラス=ファナン

:勇者を志す、軍学校所属の少年。10代の少年としては大柄で、筋骨逞しい外見の持ち主。

父親は公国の公認を得ていた先代勇者。恵まれた身体能力、回復能力を持つ。

市井の、貧しい方に入る家庭の出。

竜の血と呼ばれる異能を継いでいる。

自分の父親のせいで、ラファルドの父親が異能を喪失したことを、ずっと気に病んでいた。

〈竜気〉の使い手。


●グレゴール

:勇者試験参加者を統率する、軍学校の教官。グラディル達のクラス担任でもある。

生意気盛りの生徒たちから一目を置かれる程度には凶暴。

●ラドルフ

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友。背丈は同程度だが、身体の厚みではややグラディルに劣る。

冷静な言動を好む。勇者試験に参加している。


●ヴァッセン

:軍学校在籍の少年。グラディルの級友で、悪ガキ仲間。中肉中背。

就職に有利になるかと考えて軍学校の門を叩いたが、軍人としての将来は考えていない。

勇者試験の参加は見送った。三人で一番現実的。

●ラファルド=ルヴァル=セルゲート

:王立大学付属の高等学校に通う少年。中肉中背。グラディルと腐れ縁の古馴染み兼監督役。

学生寮で一人暮らしをしている。

異能の血族の一人にして、神祇の一人。大人顔負けの才覚を持ち、発揮する。

その影響なのか、反動なのか。必要以上に大人びた、可愛気に欠ける言動が目立つことも。

国王と親戚付き合いをする(父親の縁)けったいな家の出。

年々、異能が衰えていることを、グラディルに黙っていた。

●ガルナード=アストアル

:セレル=アストリア公国国王。ちょっとお茶目な働き盛り。

趣味はこっそり宮殿を抜け出すこと、強者との勝負。

国王の重責を理解してはいるが、同時に辟易している部分がある。

もしかしなくても、娘馬鹿。公国最強の武人としても有名。

大人気ないこともあるが、それすらも確信犯である時が多い。

親友の息子の一人であるラファルドは可愛気に欠けることが多い(割と危なっかしい)

「甥っ子」みたいなもの。


●ミラルダ=マインズ

:第三王女に仕える王宮の古強者の一人。肝っ玉おっかさん。

主人のお転婆が少々悩みの種。幼馴染の紹介で王宮で働くようになった。

庶民出の出世頭として、割と有名な人。


●アスカルド

:近衛騎士団長を務める男盛り。近衛最強だが国王には及ばず。

第三王女の素行の被害を(立場上)一番よく被る人。

取り潰しに遭った、とある貴族の家の出身だが、家に興味は無い。


●シュヴァルト=アインズ=グレスケール

:辣腕で名高い公国宰相。元々は王族の家系。

娘を国王に近づけ、さらに実権を握ろうと画策中。

才色兼備のロマンスグレーだが、国王にはしてやられることが多い。

昔の恋を今も引きずっている……らしい。


●クリスファルト=ダグム=セルゲート

:ラファルドの兄。少年時代はやんちゃだったが、今は生真面目のきらいあり。

爆走を辞さない弟たちに振り回される運命……なのか?

政治感覚に優れているが、神祇としての序列は高くない。

●セレナス=アストアクル

:公国の第三王女。市井では「白百合姫」と評判を取る美少女。

しかし、その正体は……。

孤独を負いつつも、快活な少女だが、何故かグラディルには当たりがきつい。

思わぬことから、魔王の見合い相手に選ばれていたことを知ることになった。

グラディルが羨ましい……らしい。

傍目には、結構残念に思えるところが在る。

●ラシェライル=ヘディン

:グラディルの幼馴染の少女。美人。

グラディルよりも遥かに早くから、かつ長く、王宮に勤めている。

しっかり者。粒は小さいが、上等な紅玉をお守りとして持っている。

●男

:裏町で一定の悪党をまとめ上げる人物。

下町ではそれなりの大物と思われているが、裏社会では下っ端階級の中間管理職。

鼻が利くことと、人を見る目の確かさが取り柄。

今回は面子が邪魔して、裏目に出た。


●依頼人

:仮面をつけた余所者。悪意を以て謀(はかりごと)を為そうとしているようだが。

男に看破されているように、悪党のことは一欠片も信用していない。

魔王征伐を企んでいるらしい。

公国主催の晩餐会に満を持したように登場した。

他者から魂を奪い、魔族に生まれ変わらせる異能力を持つ。

●セルディム=マグス=ファナム

:グラディルの叔父。事情が在って、故郷を離れていたが、久し振りに公国に戻って来た。

体調に不安あり。雄偉な体格をしているが、背丈はグラディルの肩程度。

制御を受け付けない血の力に苦悩し、方策を求めて彷徨っていた。

晩餐会での騒動に、悪意を以て加担したと言明する。

とある組織に在籍していたらしい。

多重人格者?

●サマト

:第三王女付き近衛の一人。姉と妹がいるため、女性の扱いには多少、慣れている。

近衛騎士団の、若手出世頭の一人であり、誰からもやっかまれるような男前だが、凶暴につき。

第2話で、少年二人の前で膝を折ったのはこの人。

侍女頭には負けるものの、第三王女と(心情的に)近しい関係を築いている。

●サティス

:魔族。獣魔遣いの一人。

魔族ではゼルガティスに好意的な方だったが、生真面目な部分もある。

黒幕にはなれないタイプ。


では、何故、離反するような真似に出たのか……?

●ゼルガティス

:魔王を名乗る魔族。本拠は海の向こうの大陸に在る。

青年然とした暴れんぼ将軍系?

往生際の悪い所があるようだ。

●ラジアム=グリディエル

:騎士団所属の騎士。

元傭兵であり、騎士の中では柄が悪く、王家にも騎士道にも夢を見ていない。

一見、がさつに思われがちだが、人品・技量共に確かなものがある。

中堅どころ。

???

:謎。魔王ゼルガティスに悪意を向けている。


●フィルグリム=ソラス=セルゲート

:ラファルドの弟。もしかしなくても、利発。

神祇としても優秀であり、将来の為に、今から不自由な生活を強いられている。

ちなみに、「兄上」が指す相手はラファルド一人だけ。他の兄を呼ぶときは、「○○兄上」のように、名前が入る。

成長期はこれから。


●レテビル=スラウフェン

:フィルグリムの補佐と監督を兼務する青年。

グラディルが目を付けたように、武芸に長けている強面。

主人のことは大事に思っているが、感情として発露することは稀。

一度は、ラファルドのお付きになる予定が在った。

●大使

:晩餐会に招待された異邦からの客人。

セレナスのことを気に入っている。

実は、とある人物の変装だった。


●魔族

:突然、晩餐会に乱入してきた。

ドルゴラン=セグムノフを名乗っている。

戦闘の最中、怪物へと変貌した。

さらには魔人へと脱皮し、猛威を振るはずだったが――。

主の意志に従い、戦場から退場する。元人間。

ある人物の影武者をしていた(主命)。


●ドルゴラン=セグムノフ

:最初は魔族を影武者にして、正体を偽っていた。

正体は……どうも、声とは違っているらしい。

そして、公国王室の縁戚だという事実も発覚。

恐るべし、公国の良心! である。

実は少女だった。


●フォルセナルド

:魔族。「依頼人」の名前。

先代魔王の血を引いており、人間風に言うならば王族に相当する。

ただ、仲間内での評価は、鼻っ柱だけ、と辛目。

魔王ゼルガティスの事は登場からよく思っていない。

身内にはやや甘いところもあるが、敵対する者には基本的に非情。

●ディムガルダ=セルゲート

:ラファルド達兄弟の父親。セルゲート家先代当主。

先代国王の治世から公国に仕えている、筋金入りの仕事人。

穏やかで鷹揚な気性に騙されると、偉いことになることがある。

国王ガルナードが常に一目を置く、公国最”恐”の人物であることは忘れられてはならない事実なのだが、

結構な頻度と確率で忘れら去られる、恐るべき人柄の持ち主。


●クラウヴィル=ファランド

:クリスファルト=セルゲートの仕えたる武士。

勤務中は冷静無私だが、非番中は喜怒哀楽が豊か。

クリスファルトにとっては、気の置けない友人でもある。

●白い竜

:突如として城下に出現した、白い体躯の巨大な竜。

その正体はセルディム=マグス=ファナムだった。


●ジェナイディン

:ゼルガティスの国で、執事の役割を務めていた高位魔族の一人。

主であるはずの魔王に謀反を仕掛けた。


●半裸の男

:???


●貴様

:半裸の男とは相容れぬものながら、対になる存在。とある事情から、この世界においては姿形が無い。

●それ

:セレナスの窮地を救った何か。転移符の首飾りを持ち去ったのは対価……というか、辻褄合わせの為。

その正体は……爆笑で神様とラファルドの間に割り込んだ何かであり、神前の魔。

神前に構える魔は補佐であり、守りであり、牙で在るもの。背後に在るのが宝であれば、神器レベルの逸品の守護者。だが、背後に「神」を戴くその時は――最凶最悪の寓意として、恐るべき本性を備え、現すことになる。

なぜならば、神聖の極点である「神」が魔を従える――それは、”世”の事象全てを司り、制する「万象の王」の顔を現すからだ。


●青年

:その正体は謎……、とか言うまでもない。神様。

ただし、セルゲート家が伝える”神様”とは、別の存在であるらしい。


●イーデンナグノ=ソルド=ファラガンオルド

:”亜”世界でグラディルを待ち受けていたもの。自称している通り、〈混沌〉を肉親に持つ極めて稀有な竜種。竜であることを自他共に任ずるが、その正体は「竜」という括りからも遠くかけ離れており、竜でありながら、如何なる竜のカテゴリーにも属さない。力有る神々をして、悪夢の存在と言わしめる〈古代種〉の「竜王」。その最強(最凶)をして、”化け物”と畏怖させる実力を持つ、という。


●イーデガン=ファラグノルド

:古文書に時折名前が出て来る伝説の竜神。〈光炎神竜〉の二つ名が特に名高い。

しかし、実在を確かめた人間は存在しない為、御伽噺の住人だという声が強い。

ただし、世界にまつわる秘密を知るようになると、その存在を疑う者はいなくなるのだとか。


●白双

:双頭の白竜、そこから来た異名。ただし、二つの頭を持つ竜王はそう多くない。

〈古代種〉に数頭存在する程度、らしい。

グラディルの前に現れた白双は事情が在って、本来の姿からはかけ離れた状態にある。

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